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それは― 骨で~す ・・・・・(°ー°;) 一瞬固まる御庭番。背筋に冷たい戦慄が走る。ミルフォードトラックは、夏は”世界一美しい散歩道”と言われる程美しい登山道であるが、厳冬期には流石に厳しい側面を覗かせる。雪崩が頻発する時期には入山制限もかかることもあるらしいのだが、それでも禁を破って侵入してしまう輩がいるそうで、御庭番が歩いた何年か前に厳冬期に入山して行方不明になった人がいたのだそうだ。 まさか、鹿の骨だろー・・っつーか人間の大腿骨に見えなくも無いんだが。。。 御庭番がドキをムネムネさせながらその場をぎこちない足取りで歩いていると、 更にえい、もういっちょう ・・・・(T▽T)。。。。 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ(T▽T) と突然、 ギャーッ って叫び声が(T▽T)!!!!! ギャーッ∈≡≡≡┌(T▽T)┘ 後から思えばスカウプの番が何やら仲違いして鳴き声を上げただけだったのだが、ビビリまくっていた御庭番は転がる様にしてその場を離れた(だってマジびびりますって。生骨ですぜ) (はあ、はぁ・・・) 青褪めた表情で突っ走った御庭番、樹林帯を駆け抜け、万年雪を頂く山々が美しい光景を見渡すプレーリーの広場に出た。すると小休止している集団が。見ればあの突貫娘TOMOYOが他のツアー参加者と共に歓談している。 『あー!アソーさん、どしたんですか?そんな蒼い表情して~?』 「ぜぇ、ぜぇ・・・じ、実はそこで骨を見つけてしまった・・・まさか行方不明者のじゃあるまいな。。。」 TOMOYOはしばらくキョ豚とした顔で御庭番の顔を見ていたが 『あー、それ鹿の骨。ここら辺鹿が多いから。』 と、冷静な顔で仰る。 「し、鹿?」 『そうですよ~。人骨と間違えたんですか?結構いるんですよねー間違える初心者。でも安心して下さい。間違いなく鹿だから、ソレ。』 (・・・・(ー_ー;)。。。) 初心者と言われて少々引っかかったが、まあ、間違えかけたことは間違い無い。御庭番は日本の山でも度々鹿の骨は見ているし、何よりこの山行で一度も鹿の姿を見なかったのだが、ガイドが言うんだから間違い無かろうと思い、よーやっと冷静さを取り戻した。 『さー、もう少しでポンポローナに着きますよ。Let's Go!!』 TOMOYOの掛け声で小休止していた他のツアー参加者も銘々荷物を背負って歩き始めた。広場を吹き抜ける風が妙に冷たく感じる瞬間であった― 再び樹林帯の中を歩き、少々勾配のある坂道を歩くと、やがてバス・ストップと言うシェルターが見えた。雨が激しい場合はこのシェルターでやり過ごすそうだが、晴天のこの日はシェルターで徒らに時間を費やす筈も無く素通り。そこから10分もかかることなく、ポンポローナロッジに到着した。 ポンポローナロッジは他のコテージとは異なり、山間にあって、陽が陰るのが早そうであった。御庭番はノンビリ歩いていたにも関わらず、所要時間を大幅に短縮して到着していたが、それでも14:00過ぎに到着した頃には陽が山の端に隠れ始めていた。ロッジから何やらいい匂いが立ち込めている。ロビーに入るとアフタヌーンティーとスコーンが用意されていた。このポンポローナと言う宿の名は、実はこのスコーンの名前に由来している。ミルフォードトラックのルートを開拓したクイントン・マッキノン、彼はフィヨルドランド初のトレッキング・ガイドであり、ポンポローナ(スコーンの一種)を作る名人であった。そのマッキンノンの焼くスコーンが余りに美味しいので、その名をこのロッジに付けたのだ。とは、ポンポローナロッジの女主人の談。 御庭番は、割り当ての部屋を確認し、荷物を紐解くと、ロビーに戻ってスコーンを一口食べたのだが、これが馬鹿旨。サワークリームやブルーベリージャムを付けて食べると堪らん旨さで、バケットに山盛りになっていたスコーンを大半平らげてしまった。 スコーンとコーヒーで寛いでいると、少しずつ他の参加者も到着し始めた。最後に入って来たのはIanとKyne。そしてあのエミリーも汗ばんだ顔で入って来たが、御庭番の姿を見ると、 『Liliy,It arrived early.Did you become tired? 』 と、微笑みながら言った。 「あー、い、いや、それ程でもござらん。エミリー殿こそ大丈夫かな?少し疲れている様に見えるが。」 『No Problem.デモチョットツカレタ』 と、ペロッと舌を出して答えた。大人びて見えるが、まだ20代前半の彼女は、何処となくまだ少女の様な雰囲気を持った女性であった。 続いて入って来たのは金髪の若い娘。カチューシャを付けて額を広く見せているが、額に汗が滲んでいる。胸につけているネームプレートにはShilviaと書かれている。エミリーは自分の荷物を下ろす間も無く、シルビアの様子を窺っている。どうやらシルビアは靴擦れができてしまったらしく、靴を脱ぐ時にしきりに痛がっていた。エミリーがシルビアを促し、靴擦れの治療をする為、奥の部屋へと連れて行った。 ミルフォードトラックはロッジによって建物の配置が違う。グレイドハウスでは寝室、トイレ、シャワーなどは同じ棟にあったがここではベッドの部屋とトイレ、シャワー室は別々になっていて、やや日本の山小屋の雰囲気に似ている。夕飯まで暫く時間があったので、御庭番はシャワーを浴びて、一番高い位置にある割り当ての部屋で暫く昼寝。同室はJosephと言うドイツ人だったが、ほとんど会話らしい会話もせずに、御庭番はタバコを吸ったり辞書を読んで簡単な英会話の勉強をしたりして時間を潰して過ごした。 夕飯は18:00だったと思う。料理は何だったかも忘れたが、相変わらず日本の登山では想像もつかない様なボリュームと豪華さであったことだけは記憶している。ブリーフィングルームにはオルガンやギターがあり、演奏でもしていっちょ景気付けしてやろか等と思ったが、悲しいことに御庭番は歌舞音曲は(も)まるでダメ男。もっともオルガンは壊れていたし、ギターもチューニングが全然できない様なボロいアコースティックギターだったので、何もしようが無いが。夕食後は再び翌日の山行の説明があり、御庭番は新西蘭のスパイツと言うビールを呑みながら説明を聞いていた。ふと見ると、厨房に日本人らしき男性の姿がある。日本人同士の参加者で集まって歓談していると、TOMOYOがその男性を連れだってやって来た。名をKenjiと言って、大学を中退して新西蘭に来たらしい。話を聞くと大変な釣りキチ三瓶らしく、手製のルアーを見せてはこれまでの釣果を色々と説明してくれた。TOMOYOとは旧知の仲らしく、まるで兄弟の様に話している姿が微笑ましかった。 翌日の出発は今日よりも一時間早いと言うことで、早々と歓談も切り上げ、自室に戻った。星を見ようと空を見上げたが、雲が出ていて、余り星もよく見えない。タバコを一本吸って他にやることも無いので寝室の小屋に戻ると既にJosephは就寝中。起こしては可哀想なので、網戸だけ開けて御庭番もベッドに潜り込んだ。 Gugo!GA~GA~gu~・・・ ってエライ鼾が。 (うるせぇな・・・)と思ったが、どうせ自分の鼾が勝ると思っていたので、我慢することにしたら FuGuOOOOOOOOOOh ・・・ZZZZZZ って、ウルセーのなんの(T▽T) (エライ輩と同室になってしまった・・・) 遠くでキアの鳴き声が聞こえている。ヒレレ滝のシェルターで見るかと思ったら、今日は逢えなかったな。そー言えば鳴き声しか聞いていないな、チクショーうるせぇな、羊でも数えるか、新西蘭だけに・・・羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹・・・いや、羊って頭って数えるんじゃねーのか、あー人間より小さいのが匹で大きいのが頭だからいいのか、しかしウルセーな、何か寝言言ってるぞ、コイツ。寝言もドイツ語かよ。とか思っているウチに夜は更け、何時の間にやら御庭番は昼の疲れもあって何時の間にやら深い眠りに落ちて行った。昨日の様に”見たことも無い光景”が目の前に広がることはついぞ無かった―。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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