変化に対応するということ
海上保安官でヘリコプターのパイロットをされている森公博さんという人がいる。2004年台風で大型帆船が富山で座礁した。167人全員の救助に成功したのも森さんの操縦技術が活かされていた。ヘリコプターでの海難事故は悪天候の中で発生することが多い。視界も悪く、強風吹きすさぶ中で人命救助に当たっておられる。下手をすればヘリコプターが墜落して、自分だけではなくクルー全員の命が失われるという危険極まりない仕事である。ヘリコプターの操縦で一番難しいのはホバリングである。これは機体を一定の場所に静止させる技術である。荒海に出て、遭難した船の上でじっと停止できないと仕事にはならない。ところがこのホバリングはとても難しい。強風が四方八方、上から下へ、下から上へと吹き抜けている。強風に合わせて常に出力を上げたり下げたり、絶えず風の変化に合わせて機体を静止させるのである。基準となる目印を見つけて、五感をフルに研ぎ澄まし、ミリ単位の操縦である。手や足だけではなく全身を使って操縦されている。訓練では1時間30分もホバリングを続ける。つまり体力勝負である。緊張する時間が長いので強い精神力も要求される。そして何よりも高い操縦技術が必要である。体力、精神力、技術の3つのバランスが取れていて、しかも高度に訓練していないと仕事にならない。我々はここから何を学んでゆけばよいのか。森田では自然の変化に対応することが大切だという。自然の変化に対応するというのは口で言うのは簡単だ。しかし実際には強い意志、体力、森田理論の深耕などで自分を磨き続けるということが不可欠なのである。