☆完全主義の分析
私たち神経症で悩む人は完全主義、完璧主義の傾向があると言われている。それでは具体的に何をもって完全主義的傾向があると判断しているのであろうか。これには「自己志向的完全主義尺度」といわれるものがあるので紹介しておこう。次にあげる項目を、全く当てはまらないを1として、非常にあてはまるを6として判定する。その間にあるものは2から5まで自分の任意の程度で判断する。1、 いつも、周りの人より高い目標をもとうと思う。2、 注意深くやった仕事でも、欠点があるような気がして心配になる。3、 「失敗は成功のもと」などとは考えられない。4、 何事においても最高の水準を目指している。5、 どんなことでも完璧にやり遂げることが私のモットーである。6、 些細な失敗でも、周りの人からの評価は下がるだろう。7、 高い目標をもつ方が、自分のためになると思う。8、 何かをやり残しているようで、不安になることがある。9、 物事は常にうまくできていないと気がすまない。10、 人前で失敗することなど、とんでもないことだ。11、 簡単な課題ばかり選んでいては、ダメな人間になる。12、 納得できる仕事をするには、ひと一倍時間がかかる。13、 中途半端な出来では我慢できない。14、 自分の能力を最大限に引き出すような理想を持つべきである。15、 念には念を入れる方である。16、 できる限り、完璧であろうと努力する。17、 少しでもミスがあれば、完全に失敗したのも同然である。18、 戸締りや火の始末などは、何回も確かめないと不安である。19、 完璧にできなければ、成功とは言わない。20、 やるべきことは完璧にやらなければならない。以上、各項目ごとに1から6までの評価ができたら、次の下位検査ごとに得点を集計して平均と比べてみる。A、 完全でありたいという欲求 5,9,13,16,20 平均18.18点B、 自分に高い目標を課する傾向 1,4,7,11,14 平均20.57点C、 ミスや失敗を極度に気にする傾向 3,6,10,17,19 平均14.16点D、 自分の行動に漠然と疑いを持つ傾向 2,8,12、15、18 平均20.16点私の場合はAが20点、Bが21点、Cが28点、Dが18点だった。特筆すべきは、Cのミスや失敗を極度に気にする傾向が際立って高いことだった。一般の人の平均が14.16だから、私の28点は異常値である。これを分析してみた。私の完全主義というのは、普通とちょっと違うようだ。それは、ミスや失敗をすると、他の人から非難されたり、軽蔑されたり、無視されたりする。また弱点や欠点も他人に付け入るすきを与えてしまう。だから他人から、うしろゆびを指されないように無難なところで納めてしまおうとする。つまり、完璧を取り繕って、不完全なところを隠してしまうという傾向が強いのである。本音としては完璧でなくてもよい。でも他人から完璧でないと思われることは耐えられない苦痛がある。そこに不安や恐怖が高まるという傾向が強いということが分かった。完全主義といってもゆがんだ完全主義者なのだった。小さいミスはだれでもある。弱点や欠点も誰でもある。言葉ではよく分かっていても、それを実際には受け入れることができない。逃げたり、隠したり、取り繕ったりのオンパレードである。反対にうまく事が運んだ時は、こんなことはだれでもできることだと素直によろこぶことがない。また自分の神経質性格もマイナス面ばかりに注意や意識を向けて、感受性が強い、粘り強い、向上心があるなどの長所には全く目が向かない。そういうバランスの悪さが生きづらさをどんどん膨らませていたのだということが分かった。森田の両面観で自分を見ていかないと明るい展望は描くことができない。まずはそういう自覚を持って生きてゆこうと思っている。(ネガティブマインド 坂本真士 中公新書 97ページより引用)