すぐに不安から逃げてしまう人へ
私たちは不安、恐怖、不快感、違和感などに取りつかれると、やりくりするか逃避してしまいます。今日は逃避するということについて考えてみたいと思います。逃避するとそのときだけは一瞬楽な気持ちになりますが、なすべきことを放棄してしまうので、暇を持て余すようになります。暇を持て余すようになると、注意や意識は内向して、後悔したり逃避した自分を責めるようになります。森田理論でいうと生の欲望とその制御機能である不安のバランスが崩れているということになります。不安のほうばかりに注意と意識が向いているのです。この欲望と不安の調和がとれているということは、きわめて大切なことです。この場合、バランスを取り戻すためには、不安などに振り回わされないことと、安易に逃げださないということがカギになります。これができれば神経症にならなかったわけですから、ものずごく手ごわい相手です。どうしたらふみとどまって逃げることを回避することができるのか。誰でも新しい事や困難なことが予想される場合は、行動することをためらってしまいます。それはいわば注射針をさされるような痛みを伴います。しかし、そこのところちょっと我慢して耐えることができれば、次の新しい展開へと進むことができます。不安や不快な不快な感情も全く同じことです。着手しているうちに、弾みがついてきて、次第にやる気や意欲が高まってくることがあります。成功すれば自信になり、失敗しても成功のための足がかりを掴むことができます。テレビで「食わず嫌いの一品」という番組があります。これは小さい頃から苦手で、絶対に食べないという一品を当てるものです。森田先生は牛乳は嫌いだという人でも、人がうまそうに飲んでいるのを見たりして、自分も試しに飲んでみることを繰り返していると次第に苦手意識がなくなり飲めるようになることがあると言われています。新しいことや困難なことに最初から挑戦しないということは、 「やらず嫌いの一品」になってしまっているのではないでしょうか。手がけてみれば、思いのほかうまくできたり、たとえ失敗しても次の成功への足がかりを得ることができます。普通の人はそういうことに対して嫌だなぁと思いながらも、その気持ちを抱えたまま、嫌々仕方なく手を出しているのだと思います。そうすると生活がなんとか前に進み、弾みがついて好循環が生まれてくるのだと思います。次に、そういう人は不安になるとすぐに逃げ出してしまうのが自分の癖であるという自覚を持つことが大切だと思われます。しっかりと自覚していると、逃げ出さないためにはどうするか考えるようになります。私が訪問営業の仕事をしていた時、すぐに予期不安に圧倒されてサボりまくっていました。それは自分ひとりになると、つい楽なほうに流されてしまうからでした。そういう時は二人1組になって仕事をすれば、抑止力が効いてサボるということがなくなるということに気がつきました。いつもいつもそういう営業スタイルは取れないでしょうが、時々そういう営業スタイルを取り入れていけば、弾みがついて自分1人のときでもサボるという癖が少なくなっていくような気がしました。確認恐怖の人も、自分一人で確認をして納得しようとするから、乗り越えることが難しくなるのかもしれません。家族や同僚などと一緒になって確認すればうまくいくかもしれません。それから職業の選択についてですが、私は適応不安を感じながらも、安易に訪問営業の仕事選んでしまいました。職業は早くから慎重に選択することが大切だと思います。職業は1万2,000種類ぐらいあるそうです。例えば動物を相手にする仕事、自然を相手にする仕事、飛行機や新幹線などを運転する仕事、物作る仕事、人にものを教えるような仕事。その他色々とあります。高校から大学生にかけての時期は、自分の将来の仕事をみつける時期です。自分がこれならやっていけそうだという職業を早く見つけることが大切だと思います。最後に、森田理論学習では、不安と欲望は対になっており、不安に翻弄されるのではなく、生の欲望に邁進することが大切だと言われています。ここでいう生の欲望というのは非常に範囲が広いものだと思います。たとえば、最初は気が進まなくても嫌々仕方なく、目の前のことに手を出していく。次には実践課題に取り組んでみる。さらに気がついたことを逃さないようにメモして課題のストックを貯めていく。そして、簡単なものや納期の急ぐものから手をつけていく。規則正しい生活を心がける。物、自分、他人、お金、時間をできるだけ有効に活かして使う。人の役に立つことに取り組んでみる。好奇心を生かして趣味などやりたいことに取り組んでみる。大きな目標や課題を設定してチャレンジしてみる。自己実現の欲求ですね。 その他生存欲求、安全への欲求、所属の欲求、称賛への欲求などいろいろとあります。私たちが神経症で苦しんでいるときは、生の欲望の範囲がごく1部分に限られていることが多いようです。このように幅広い生の欲望があるということを意識しておくことも大切です。ここで大切なことはいかに不安がつきまとおうとも、生の欲望の発揮から決して目をそらしてはならないということです。毎日緊張感を持って生活していると、次から次に問題点や課題が見えてきますので、素直にその波に乗っていけばよいのです。不安などがあると、すぐ困難から逃げだすと言うのは、 1つの癖が形成されていると思われます。その癖は新しいクセによって修正することができます。そのために森田理論を活用していただきたいと思います。