☆宇宙の仕組みから森田理論を考える
赤道付近では地球の自転速度は時速1,669 kmであるという。地球が太陽の周りを回る公転速度は時速1万400 kmである。太陽系は天の川銀河の中心部から2万6,100光年離れたところに位置している。太陽系は天の川銀河の周りを時速86万4,000 kmのスピードで回っている。それでも太陽系が天の川銀河を1周するのに約2億年かかるそうです。天の川銀河は宇宙空間を時速216万km (秒速6,000 km)のスピードで移動している。天の川銀河の隣にはアンドロメダ星雲があり、お互いの重力によって毎秒279 kmのスピードで接近している。今から200万年後には、この2つの銀河は完全に合体してしまうという。これを基にして計算すると、我々は1時間当たり5,184万kmほど移動している。1年では189億km移動していることになる。このことから何がわかるのか。少なくとも次の2つのことが言える。宇宙の現象を見ると、絶えず猛スピードで変化流動しているということだ。地球が太陽の周りを回って1年たつとまた元に戻るといっても、実際には1年前の場所に戻っているわけではない。今まで来たことのないような場所に到達していることになる。次に宇宙は自由気ままに動き回っている訳ではない。太陽は巨大な引力を持っているが、我々の住んでいる地球を始めとする多くの惑星が、太陽に飲み込まれないだけの遠心力を持っている。引力と遠心力が釣り合ったときに初めてその存在が許されているのである。少しでもお互いのバランスが崩れれば、太陽に飲み込まれてしまうか、太陽系の外に飛び出してしまう。そうなれば私達人間を始めとする生物がこの地球上で生存できる事は出来ない。これは物事を見るときに片方だけを固定的に見ては間違いが発生するということである。物事は流動変化を前提とし、自分と他人との相互関係のバランスをいかに維持していくのかという視点が欠かせないということである。この宇宙の現象から我々の精神生活も離れる事は出来ない。私たちも不安、恐怖、不快感などで一時的に苦しんだりとらわれたたりすることがしょっちゅうある。しかし、いつまでもそれらに関わりあうことはできない。1つのことにとらわれて留まっているということは、宇宙で言えば、存在そのものが許されないということになる。不安や恐怖などは、対処できるものはすぐに手をつける。考えてもどうしようもない事は、苦しいけれどもそれらを抱えたまま次の行動に移ることが基本になる。ぐるぐる回るコマは廻っている時が安定している。前に進んでいる自転車は動いているからこそ安定している。動きを止めた途端にすぐに倒れてしまう。われわれの精神生活もこの法則から逃れることはできないのである。次に、人間は1人で生きていくことはできない。人との関わり合いの中で初めて生き長らえることができる。相互関係の中で利害が対立することは日常茶飯事である。自分の欲望を満たすために他人を支配したり従属してしまうことは、宇宙の法則から見ると、人間関係のバランスを崩してしまうことである。その方向では一時的に上手くいく事はあっても、長期にわたって成功することはない。なぜなら自然はバランスが崩れると必ずそのバランスを取り戻そうとするからである。マグマの移動により、プレートの歪みが溜まると必ずその歪みを解放する力が加わるのと同じことである。他人と意見や利害が対立するときは、話し合いや交渉が必要になる。お互いが支配したり支配されたりする関係になると、後々まで遺恨を残してしまう。主張するところは主張し、譲るところは譲るという人間関係を保ち続けるという強い意志が必要となる。森田理論は人間はその自然の一部であるという。自然の動きに合わせて一緒になって変化し続けていく生き方を目指している。時として自然に反発して傲慢になっても、最後には反省して謙虚になって自然を敬う態度に立ち返ることが重要である。