雑誌「プレジデント」に森田療法が紹介されました
2022年3/4月号の「PRESIDENT」に東京慈恵医科大学の舘野渉先生の『精神科治療「最新」ガイド』と題する記事が8ページにわたって掲載されていました。なお、このビジネス誌は54期連続No.1の雑誌です。バックナンバーが用意されています。認知行動療法との比較で森田療法を分かりやすく説明されています。この記事によると、2017年には精神疾患により医療機関にかかっている人は400万人を超えているという。神経症や生きづらさを抱えながら、医療機関にかかることもなく、独りで辛い生活を余儀なくされている人は相当の数になることが予想できます。この記事では、森田療法が適応する病気と応用しにくい病気があると説明されています。森田療法は不安にとらわれやすい人や「かくあるべし」という観念が強い人が神経症に陥った場合は効果的である。また「生の欲望」が強いという気質の人に向いている。私が興味深く感じたのは、認知行動療法と森田療法の比較の部分でした。現代の認知行動療法は進化して、マインドフルネス認知療法(MBCT)やアクセプタンス・コミットメントメントセラピー(ACT)などと呼ばれるものがある。マインドフルネスとは、今の瞬間の現実に常に気付きを向け、その現実をあるがままに知覚して、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方や存在のありようを意味します。第3世代の認知行動療法と森田療法は「あるがまま」という共通点があります。つまり、不安コントロールモデルから受容モデルへと変化してきている。違いがあるとすれば、森田療法の不安受容というのは、当然最初にとり組むべき課題としています。しかし、そこを最終目的としているわけではありません。最終的には「生の欲望の発揮」を目指しているというところです。森田療法は、課題や目標、夢や希望を常に射程に入れて、生産的、建設的、創造的な生き方を目指しているというところです。不安受容がゴールではなく、そこを出発点としてとらえているところです。そういう意味では、森田理論は静的で精神の安定的な世界を目指しているのではなく、常に動的な世界を視野に入れた理論であるということになります。実践や行動と森田理論が混然一体となって、活用できるようになることが肝心です。森田療法でいう実践・行動ですが、最も重視しているのは日常茶飯事を丁寧に行っていくということです。凡事徹底です。物そのものになって一心不乱に取り組んでいく。必要な時に、必要に応じて、必要なだけの行動を心掛ける。気が付いたら一時的に神経症のことを忘れていた。そういう体験を積み重ねるということを言います。そして神経症からある程度回復したら、自助組織などに参加して、神経質性格、神経症の成り立ち、認識の誤り、今後の生き方などを森田理論学習で深化させていくということです。