マイナス感情にきちんと向き合うこと
神経質者は「自分が傷つくことには敏感だが、人を傷つけていることには鈍感だ」と聞いたことがあります。相手が嫌な思いをしているのに、本人が他人を傷つけていることに気づいていない。神経質者は、他人の思惑を気にして慎重に対応しているのに、どうして人の心に土足で踏み込むようなことが起きるのでしょうか。それは日頃不快な感情を排除することが習慣化しているからかもしれません。ふつうの人もイヤな感情が湧き上がってきたときは落ち込みます。でも自然現象である不快な感情と正面から闘うようなことはしていない。それは無理だということがよく分かっているからです。仕方なくその不快な感情が一山超えて収まるのをじっと待っている。時間が経過すれば、不快な感情が収まってくることがよく分かっているのです。私達はこれができない。何としても排除しようとしている。それも今すぐにと言う気持ちが強い。せっかちです。すっきりしないと我慢できないのでしょう。排除することを優先するあまり、不安ときちんと向き合っていないということになります。そのうち、他人の気持を思いやるような心のゆとりがなくなってくる。これは周りから見ると感じる力が鈍化しているということになります。もともと感受性が豊かなのですが、感性が鈍くなるということが起きるのです。その結果、平気で他人を傷つけているという問題が発生している。石原加受子氏はその弊害を次のように説明されている。感情を抑えたり、感情にフタをしたり無視したりすれば、確かに心の痛みから目をそらすことができるかもしれない。けれども、マイナスの感情をもたないですむ代わりに、プラスの感情にも鈍感になってしまう。どんなに論理的頭脳に優れていても、どんなに芸術的な感性にあふれていても、それを追及しているとき、楽しい、嬉しい、おもしろい、ワクワクするといった感情を味わうことができなければ、それを継続する意味を見失うだろう。喜びの感情があるからこそ、創造的な活動に没頭できるのである。(もっと自分中心でうまくいく 石原加受子 こう書房 102ページ)石原氏は、小さな不快な感情ときちんと向き合うことを拒んでいると、他人を平気で傷つけるような発言や行動をとるようになる。さらに、プラスの感情も味わうことができなくなると言われているのです。逆に言うと、小さなマイナス感情をきちんと受け止めている人は、小さなプラス感情も大いに味わうことができるということになります。森田では仕事や日常生活の中で、小さなプラス感情をより多く味わうことを目指しています。小さな喜びや感動を日々味わっていると、生きることが楽しくなってきます。そのためには、不快な感情を目の敵にすることを止めて、あるがままに受け止めることが大事になります。滋賀県 信楽焼