心配事がなくなるとボケる
瀬戸内寂聴氏のお話です。心配することが何もないという人はボケますよ。私の義兄、姉のお婿さんがボケたんです。70代でしたけどね、面と向かって私のことを、「あなた、どなたさんですか」なんていうぐらいボケたんですよ。それで姉が心配しましてね、老人ボケだっていうんで、そばを離れないでついていたんです。ところがその看病していた姉のほうがガンで死んじゃったんですよ。そうしたら姉が死んだ途端に、そのボケ老人がシャーンとしてしまいました。それでいま、とてもしっかりしているんですよ。100歳まで生きるかもしれない。だからあれは甘えていたんですね。心配することがないので安心してボケけてたんです。姉が死んで、ボケてたら誰も面倒を見てくれないと思ったとたんに、シャンとしてきた。(わたしの宇野千代 瀬戸内寂聴 中央公論社 182ページ要旨引用)定年退職して、年金が満額もらえるようになり、家でのんびり過ごしたいと考えている人はボケる可能性が高まります。また食事、掃除、洗濯、ゴミ出し、隣近所との付き合いなどを配偶者にまかせている人は危ない。外出するのは配偶者が買い物に行くときについていくだけというのも危ない。年金が少ない人で定年後も仕事を続けざるを得ない人は、物忘れは多いが、ボケることはあまりない。仕事を引退しても家事全般、孫の世話、農作業、動植物の世話、趣味、習い事、学習、親しい人との交流などを心がけている人はボケない。つまり自分でできることややらなければいけないことを、面倒だ、わずらわしいと考えて他人に依存するようになると危ない。三重野悌次郎氏が言われていましたが、雑事を軽視すると人生は活性化しない。雑事を丁寧にこなして、小さな成功体験を積み重ね、ささやかな喜びや感動を味わうことができるようになると、ボケが入り込む隙間がなくなってくると思う。