カテゴリ:第2章 泡沫の夢のように
リン・イーレイは夕闇迫るポトマック川下流まで車を走らせると、鬱蒼とした雑木林の下で車を止めた。 そして、運転席のドアを開けると後部座席のドアに回り込み、シートの下にあるロープで先生の両手足を縛り始めた。 「何をするの?」 リンは私に一瞥くれた。 「彼は知り過ぎた」 「まさか……」 リンは何も答えなかった。 「危害を加えないと言ったわ!」 「あなたにはね」 先生は意識が朦朧としているのか、薄目を一度開けたきり、また目を閉じてしまった。 私は車から降りると、リンの背後に回り、その背を思い切り叩いた。 リンは私を払い、銃口を私に向け、先生を担いだ。 「僕があなたを殺さないのは、マッカーシーのご婦人だからだけではない。 あなたは我々にとって重要な鍵を握っているからだ。 だが、聞き分けてくれないと僕にも考えがある」 脅しではないリンの目に息を飲んだ。 「殺すの?先生を?リチャード・ヴォーンやラルフ・デューイのように?」 リンは吹き出し、次の瞬間高らかに笑った。 「彼らは僕が殺ったんじゃない。僕だったらあんな派手な爆殺はしない」 「じゃ、誰が」 「あなたは知らない方が良い。全てジョージやマッカーシに任せて幸せな人生とやらを送るんだな」 不意に出てきた二人の名前に頭の奥がキーンとなり、頭を押さえその場に蹲った。 「僕だったら万人に知られることはなくひっそりと葬りますね。 こんな風に、ね」 リンは先生を川に放り込むと、「任務完了」と両手を払った。 「先生!先生!!せんせーーーーい!!!」 私は下流に流されて行く先生の後を追って駆け出した。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります 「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.02.27 09:49:27
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