カテゴリ:第3章 約束の地へ
僕は神経を集中させ、回りの微かな音にも気を配りながら、一歩一歩敏子さんの方へと歩を進めた。 敏子さんは僕を見上げると、クスリと笑った。 『以前は私と同じ位の背だったのに……。もう“少年”なんて言えないわね』 敏子さんの笑顔を見ながら、現実感の無い、それでいて例え様のない不安に襲われた僕は彼女の肩を掴み、揺さぶった。 『なぜ、あなたがここに!?それに、アリシアはどこに……』 ここは間違いなく日本ではなかった。 この部屋の窓の向こう側に見えるフォード車とその英字ナンバープレートに一瞬目を止めると、そう確信した。 彼女はよろめき、その顔には明らかに困惑の色が浮かんだ。 『あんたこそ、どうしてこんなところにいるのよ?』 『それはこっちのセリフ……』 カタン 扉の向こう側からする突然の物音に、僕は敏子さんを床に伏せさせると、扉の横ににじり寄った。 『テツヤ?』 『しっ!』 ノブに手を掛け、ゆっくりと回した。 扉の向こう側には誰もいなかった。 肩で安堵の息を吐くと、そのまま扉を向こう側へと押した。 「おはよう。ようやく起きたようだな、藤枝哲也君」 僕は扉の真横に寄り掛かるようにして立っているリン・イーレイと目が合い、身構えた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります 「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.07.02 00:33:56
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