老朽化の危機―ダマスカスの旧市街
ダマスカスの魅力は何といっても、歴史を感じさせる街並み。古来から絶えることなく人々が住み続けた世界最古の都市。歴史が街の至る所に息づいています。なぜ人は古いものに惹かれるのでしょう? 過去から学ぼうという潜在的な意識がそうさせるのでしょうか。ダマスカスにある旧市街が世界遺産に指定されていることは、前にご紹介済みです。ところが、この旧市街が危機に瀕しているって皆さまはご存知でしたか?写真を見ていただくと分かるように、老朽化が主な問題になっています。今にも倒れそうな家。写真では分かりにくいですが、左側にある黒い棒によってこの家は支えられ、倒れずにすんでいるのです。オールドダマスカスと呼ばれるこの旧市街、1995年から2005年の間に2万人以上の人が旧市街から引っ越して、モダンな家に住むようになりました。急激に減った旧市街の人口。たくさんの建物が放棄されたり、修理されないまま廃墟になったりしました。そのため地方自治体は、旧市街の広範囲にわたるエリアで再開発を進めるため、古い建物を取り壊すという政策を発表したそうです。これがきっかけとなって、ワールド・モニュメント財団による「最も危機に瀕しているワールド・モニュメント・ウォッチ・リスト」にこの旧市街が加えられることになったのです。 今にも崩れ落ちそうな2階 このウォッチリストは、ユネスコが指定する「危機遺産」とは違うのですが、内容は重複しています。オールドダマスカスには、旧家を改装して素敵なレストランやホテルに変身させたケースも多々あります。先回ご紹介したレストラン「エリサール」もそうですし、Beit Zaman や Old Vine といった人気の高いホテルなどもその例です。こうしたアンティークな建物はすごく人気で、観光客を魅了します。開発という名のもとに、歴史の息遣いが消えていくのは残念なことですね。ウォッチリストに載ったことで、少しでもこうした動きに歯止めがかかることが期待されています。日本でも京都で町屋を改装して、お店にしたり宿泊施設にしたり、いろんな試みがなされていますね。ダマスカスでも引き続きそうした試みが続けられていくといいなぁと思います。 中東の街並みとホスピタリティを味わうには http://picturesque-jordan.jp/japanese.aspx