身から出た錆(さび)=自業自得ともいいます。言い得て妙なり。昔の人はうまく表現したものです。
「イスラム国」の台頭は、アラブ世界の複雑さを見くびっていた西側諸国がまいた種といえるでしょう。オバマ大統領も、直接的ではありませんがこの事実を認めているようです。「イスラム国」はシリア内戦の期間中に頭角を現し始めました。
シリアでの内戦はずっと「政府 VS 国民」と報道されていました。でもシリアでのデモが凶暴化し始めた時点で、シリアが宗教戦争あるいは宗派間戦争に突入していたことは明らかでした。
私はこのブログで一貫して、シリアでの内戦が宗教戦争であることを伝えてきました。2年半前のブログで「NATO がシリアを攻撃すれば…??」という記事を書いたことがあります。http://plaza.rakuten.co.jp/fmtours/diary/201205310000/ この時期、NATO がシリア内戦に介入してシリア政府をつぶしてしまえばいい、という意見が多々出ていました。もちろん、シリア事情に全く通じていない人たちの無知な発言でした。この記事を書いたときに、"NATO がシリアを攻撃すれば問題は解決する" と高らかにうたっていたある女性ブロガーから「ふざけたことを書くな!」という脅しのようなメールを受け取ったりもしました。
この時の記事では「アサド政権が倒れても、殺し合いは続くでしょう。すべての虐殺をアサド政権のせいにしている各メディアは、″諸悪の根源″であるはずのアサド政権が倒れた後にも続くであろう虐殺に対してはどういう報道をするのでしょう」と書きました。
そして、現在…。虐殺に次ぐ虐殺。アサド政権とは何の関係もありません。つまり、初めから宗教間・宗派間の争いだったということです。アラブ世界は宗教的・民族的に入り乱れたモザイク国家。この微妙なバランスが壊れたために、「イスラム国」のような過激派が台頭しました。この微妙なバランスを壊す原因になったのは、アラブ世界の複雑さを全く理解していなかった西側諸国の介入。イスラム国のような過激派組織の台頭の大きな原因は、アメリカなど西側諸国からシリアの "反体制派" に供給された多額の資金。
ちなみに "反体制派" については、1年前のブログで「"反体制派" というのは名ばかりで、実際は宗教グループや組織の利権ごとに分裂しており、大義も大志も何も持っていない。だから犯罪的な行動が目立ちます」と説明いたしました。http://plaza.rakuten.co.jp/fmtours/diary/201309090000/
西側諸国からの多額の資金援助で組織を拡大した「イスラム国」。1年前にはほとんど存在が知られていなかったのに、今では巨万の富を自由に操って世界を震撼させるまでになりました。で、身から出た錆を何とか取り除こうと躍起になっているのがアメリカをはじめとする西側諸国。
懲りずに、シリアの別の "反体制派" に軍事訓練を施して、共に「イスラム国」と闘おうと呼びかけている。さて、現在は「イスラム国」にジョインしていない(かのように見える) "反体制派" から、将来の「イスラム国 NO.2」が現れかねません。
アラブ世界が西側 (欧米諸国) と恒久的に協力することはあり得ません。それは、アラビアのロレンスの時代から明らかです。協力するとすれば、自分たちに都合のよい期間だけ。アメリカは将来の「敵」を育成しているのです。軍事面でのノウハウを提供して、また身から出た錆を刈り取るだけ…。
とーーーーっても複雑なアラブ世界…。この、宗教的・民族的・歴史的に複雑なアラブ世界を理解するのは並大抵のことではありません。アラブ自身も理解していないと思います。民族的・宗教的なプライドが先行して、理性的・客観的に物事を考えられないからです。
今回の空爆により、中東情勢はさらに混迷の度を増すことでしょう。出口の見えない戦いに突入したと言われています。さてはて、今日は難しい話になりました。最後に書くのもなんですが、興味のない方はスルーしてくださいね。私自身は、中東の複雑さを日々身を持って感じさせられているので、今後の中東の行く末に多大な関心を持っております。本日もヨルダンは平穏なり。この平和がこのまま続くことを願っています・・・。
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