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テーマ:徒然日記(23327)
カテゴリ:私小説的新生活日記
一人暮らしの部屋は、広めであったが、
なにしろ台所が狭かった。 小さなシンクのすぐ横に電熱式のコンロがひとつ。 まな板を使うときは、 シンクの上をわたすようにして作業する。狭い。 野菜や材料を置くスペースなどないので、 フランフランで買ったお洒落なワゴンを使っていた。 だけど、料理をするような台所ではない。 台所のすぐ横に洗濯スペースと玄関がある。 食器を洗っていると、スポンジの泡液が、 ビュッと飛んで、玄関の靴を濡らしてしまうことも しばしばであった。 大切な靴は玄関に置きっぱなしにしてはいけない。 台所の向かいにはバスルームがあり、 トイレと風呂が一緒になった、 これまた実に狭い ユニットバスがあった。 台所で作業をしていると、背後にはトイレ、風呂場、 横には玄関と洗濯機。 いったいここは、キッチンなのか、バスルームなのか、 それとも玄関なのか、…わからなくなってしまう。 そうだ、これが一人暮らしの部屋というものだ。 風水なんて、いくらやっても無駄と思われるような 構造を持った独身者向け住宅。 独身である限り、 この狭苦しい混沌の中に住まわねばならないのだ。 そんな現実には、ちょっと悲哀が漂うが、 それでも自分なりに住みやすくアレンジしたり、 創意工夫でうまくやっていける自信はあったのだ。 その自信を崩壊させたもの、それは、ゴキブリであった。 10年目を越えたあたりから、 ゴキブリがひんぱんに出るようになった。 それも大きいヤツ。 ゴキブリばかりは、いくら対策をしても 出るものは出るので、仕方がなかった。 長く住んでいるうちに周囲の住人は、 独身の20~30代男性ばかりになっていた。 以前は、ひんぱんに引越を目撃したが、 最近は不景気のせいなのか、誰も出て行こうとしない。 もしかすると、近隣住人の部屋が ゴキブリを繁殖させているのかもしれない、 そんな疑念もわき上がるが、確かめることはできないし、 ゴキブリに対しては、受け身でいる他なかった。 これは、つらい。 夏のはじめには、目にする黒いものは、 なんでもゴキブリに見えてしまうまでに、 精神的に追いつめられていた。 遺品整理屋は見た!! もう限界だ。 なにがなんでも、引越しよう。 そうだ引越だ。 考えてみれば、長く住んで、何もかもが傷んできている。 そろそろここを引き払う頃合いなんだ、そうなんだ。 なにも、あえてこんなボロい部屋に住み続けることはない。 アート引越センター全員野球の経営 さぁ、引越だ! と、思って物件を探すものの、 同じ広さを求めると、家賃がぐっと上がってしまう。 家賃を上げない事を条件に探すと、築年数が激しく古いとか、 交通が不便だったりして、なかなか条件が合わない。 私は、広い家に住みたいのだ。 苦肉の策として、持ち物を減らす事にした。 家が広くないのだったら、持ち物が少なければ、 相対的に広くなるではないか。 そうすれば、今よりちょっとばかし狭い部屋に移ったって、 さほど苦しいこともないだろう…。 それにしても、なかなか良い物件はないものかの~。 と、煮え切らずにいた時、 友人にゴキブリ・ストレスの話と引越したい話をした。 友人は、 「フリフリさん、ウチに住めば?」 と、言った。 この友人はKという。 Kの家は、ファミリータイプの大きな家だ。 私が憧れてやまない広い家に、Kは一人で住んでいた。 私は、Kの申し出にかなり戸惑った。 Kと一緒に暮らすなんて、できるんだろうか? 他人と暮らすなんて、 最も自分の性格と合わない行為なんじゃないか? Kとしては、家族がみな他界してしまい、 自分も独身を貫くつもりだから、 40過ぎの独身女性同士、共に暮らすことは、 メリットが大きいし、大きな家にも住人がいた方がいい、 という考え方のようだった。 私たちの住居学 私は、悩んだ。考えた。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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