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テーマ:徒然日記(23328)
カテゴリ:私小説的新生活日記
Kの家は広い。
何度か遊びに行ったが、初めての時は、 その広さに驚いたものだった。 軽く10帖超えたくらいの広いリビングに、 広々とした使いやすそうなキッチン、 玄関ホールも広く、大理石なんかがあしらわれてる。 セレブなお宅とはこういうものか、と感じ、 財産家とは、こういう人なのだなぁと、 Kについても、他の友人達とはちょっと違う何かを 感じていたのだった。 Kは、おだやかな人柄で、話し方もおだやか。 立ち居振る舞いもゆったりとしており、 心の中の状態を他人に見せないタイプ。 例え心臓がバクバクするほど焦っていても、 ポーカーフェイスでゆるやかにしゃべるだろう。 それはKの育ち、教育、環境、 そして背負ったものが Kにそうさせているのだろうと、 私は考えていた。 大きな財産を持っているKは、 「無責任」という言葉から、 もっとも遠いタイプの人だった。 それゆえ、付き合う上での安心感があった。 たまにKの意図が読めないこともあったが、 だからといって困る事もなかったし、 こちらもKについて、ことさら追究する気もなかったので、 親しいけれど、大人のつきあいをしていた感がある。 つまり、Kとは、いわゆる「親友」とかいう 間柄ではなく、あくまで「友人」のひとりであった。 Kは、私が家に住むなら、このくらいの家賃で、 電気水道などの光熱費は折半という、 ざっくりとだが、具体的な案を提示した。 現状私が払っている家賃よりも安くなるが、 家が大きいため、光熱費は驚きの 10倍くらいになりそうだった。 差し引きしても、今より負担が軽くはなる。 Kの申し出から数日後のある朝、 大きなゴキブリとの戦いのあと、 私は申し出を受ける事を決意した。 他人と暮らすということは、チャレンジであるが、 さほど無理な事もないだろう。 それよりも、 このままゴキブリに脅かされて生活することの ストレスには耐え難い。 なわけで、あっさり気持ちは固まった。 憧れの「広くて大きくてモダンなお家」に 住めるチャンスなんて、 この機会を逃したら一生ないかもしれない。 迷ってる必要はないような気がした。 そして私は、引越屋さんに見積もりをとるべく 連絡をしたのだった。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年11月02日 12時52分02秒
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