養母三口

ユータはよく吐く。
最近吐かなくなったと思っていたら、ついさっき吐かれてしまった。

夜中の3時半ごろ寝ていると、「ママ、ユータが吐いた」とカコが起こしにきた。
子供部屋に行くと、（二段ベッドの下）敷き布団の上に山盛りのゲロ。
ボーとしているユータ。

ゲロの被害は、敷き布団とタオルケット、毛布生地でできたスリーパー。
特に敷き布団とタオルケットは被害大。

ゲロ付きタオルケットをお風呂場の浴槽に置き、シャワーで嘔吐物を流すと、
浴槽が詰まってしまった。

浅はか・・・。

栓のところで詰まっている嘔吐物を指で押しつぶして流したところ、
今度は排水溝の網のところで詰まってしまった。

もう、自分が嫌になるぐらい浅はか。

手で嘔吐物を掻き出して、ゴミ箱へ捨てる作業を繰り返していると、
『私ってば、いつもいつもユータのゲロ掃除してる。
何が悲しくて人のゲロを手で掻き出さなくちゃいけないのぉ。
私の人生って、ゲロ掃除の人生だなぁ。
ゲロ掃除するために旦那さんの結婚したのかな』などと考えてしまった。
私にはそれぐらいしか価値がないのかなぁ～とネガティブな考えが浮かぶ。


話はずーーーーーーーーーっと昔に遡りますが、
以前勤めていた会社ではブランド品などを扱っていたため、
（社割りがかなり利いたので）１２月になると
男性社員は彼女や奥さんへプレゼントとして買っていたりしました。
私はそれを見てすごく羨ましかった。
こういうプレゼントをしてくれる彼氏がいればなぁ～って。

その当時付き合っていた彼氏は、
「お前にプレゼントしたら、
お前も俺に同額（またはそれ以上）のプレゼントしろよな」と言う人だったので、
会社の人のようなプレゼントをしてくれるようことはありませんでした。

年末に彼氏の家で鍋パーティー（忘年会）があり、
彼氏の友達が６人（男４、女２）ほど集まり、そこに呼ばれた私。
夕方ぐらいから始まり、みんながいい感じ酔っ払ってきたころ、
来た女性の恋愛のことになり、クリスマスプレゼントの話題になりました。
確か彼女は真珠か何かの指輪を貰ったんだと言って、
手につけてきた指輪を見ててくれました。
もう一人の人も何かアクセサリーを貰ったと言った気がしました。

私はその年のクリスマスに何を貰ったか覚えていませんが、
「いいな～。
うちの会社の男の人なんて、みんな彼女にブランド品を買ってあげてるんですよ～。
中には30万以上の時計もですよ。
うちの彼氏なんて、前の彼女には『アレ買った』『コレ買った』と言っておきながら、
（アクセサリーなんて）私には安い指輪（3600円）だけですよ～。
いいなぁ～、羨まし～」と言ったんです。

そうしたら、その中の口の悪い一人に、
「お前はその価値がないから貰えないんだよ」
と言われたんです。

すごくショックで、酔っていたこともあって泣きました。

価値がない・・・。
価値がない・・・。
そうか、私にはその価値がないのか・・・。

かなり昔に言われたことなのにいまだに忘れない。
それぐらい傷ついた言葉。
いまだに引きずっている言葉。

他にもなぜか彼の口の悪い友人には泣かされた。
最後のほうは、「泣かされるから、会いたくない」と言って会わなかったぐらい。

嘔吐物を取りながらいろいろ考えた。
『気持ち悪い』
『なんてこんなことしてるんだろう』
『ゲロ掃除ばっかりして』
『私の人生、ゲロ掃除の人生か』
『価値がないのかな』
『面倒くさい』
『どうして私が！』
『全くユータのヤツなんで吐くのよ！！』
『トイレで吐け、トイレで！』
そして、すべたの嘔吐物を取り除いてた時、私の心の嘔吐物も取り除かれた気がした。

そして気がついた。
全然ユータの体調を心配していない自分に。

もし、マコだったらきっと体調を心配している私がいると思う。
『可哀相だな』『苦しくないかな？』『風邪かな？』『熱は？』と思うと思う。
それなのに、私が思ったのは上の言葉ばかり。
正直言ってそのことに今落ち込んでいる。

戒めもこめて、このことをブログに残そうと思う。
いつか実子のように気遣いができる私になりたい。
ユータを引き取って2年。
まだ時間が足らないのかもしれない。