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2007.02.21
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カテゴリ:隣の部屋
FOR BEGINNERS 101 「ハンナ・アーレント」 
文●杉浦敏子 イラスト●ふなびきかずこ (現代書館)2006/12

異質な他者との共生を唱え、全体主義の苛烈な批判者であり、かつ、大衆社会を批判し、多様性を徹底的に擁護する。
生誕100年、混迷の現代を撃つ。


のキャッチフレーズ。
これはとてもわかりやすい、ハンナ・アーレント入門書だと思う。
品性と知性あるイラストがまたよきナビゲーターになっていて、親しみやすい。
私のような初心者にはありがたかった。

ここからもネットの世界に対応していると思われる点を、一部分だが抜書き。

○インターネットの普及は個人の匿名性を前提としており、誰も語っていることに責任を問われない。そこには公的空間がない。
政治には匿名性ではなく、各行為主体の個別性の承認が必要とされる。
何(What)ではなく誰(Who)が問われるのだ。
政治的に活動するということは可視的になること、自らの事績が他者によって認められ、判断されることを意味する。
一つの意見や選好が客観的なものに変わるのは、複数の人々の対話と行為からなる公的空間にそれが現れるからである。 p.163

○次に「活動」の不可予言性はもともと二重の意味をもつ。
第1 にそれは「人間精神の暗闇」から生まれている。
人間が自分自身を頼ることができない、あるいは完全に信ずることができないということは、人間が自由に対して払う代償といえる。

第2 に人間は行為の結果について予め知ることができず、未来に頼ることができないというのは、多数性に対して払う代償であり、万人の存在によって各人にそのリアリティーが保証されている世界の中で、他人と共生する喜びに対して払う代償である。

そして約束する能力の機能は、人間事象の暗闇を克服する。
個人の衝動と意図が予測不可能であろうとも、人々の間にある世界で形成される合意は、「人間精神の暗闇」を取り払い、より永続的で信頼しうるもの、つまり権利を承認し、人々を守る法律や制度を樹立することを可能にする。 p.111

○さらに重要なことは「活動」の持つ公的性格である。
それは具体的には「公開性」と「世界性」を意味する。
私的体験はそれが他人に見られ、かつ聞かれ得る形に変形されない限り公的なものとはなりえない、というのが「公開性」の意味である。

また「世界性」については「世界において共に住むということは、本質的には世界がそれを共通に保持している人々の間に存在するということである」(『人間の条件』)と述べ、
世界は人々を結びつける共通の場であり、公的事柄への関わりを通じて共に活動する場なのである。  p.112



このあたりを読むとき、寺山修司のいう「……この場合の運動というのはあくまで政治--ポリティーク--の領域のそれであって、私は芸術運動というものは信じない。」
の言葉が思い出されるのだった。
アーレント言うところの「労働」「仕事」「活動」については、次の機会に書いておきたいと思う。

西洋哲学というものを理解できない頭の持ち主の私であったが、アーレントの著作だけには胸を熱くさせられた。理解できているとは決して言えないにもかかわらず、アーレントを知らないまま死ななくてよかった、と、思うのである。











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Last updated  2007.02.21 15:42:53
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