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ただ、星新一を読んでいる。ただただおもしろいから星新一を読んでいる。(下P.212)
そんな中高生の日々を送りました。田舎住まいだった中学3年の夏、近所の本屋で売れ残っていた240円のとっても薄い一冊の文庫。それが、「ノックの音が」でした。全てが「ノックの音がした」ではじまり、驚くべきラストで終わる小編集。多分学校の教科書とかで星新一の作品はすでに読んではいたんだろうけれど、事実上、自分にとって初めて星新一という作家を意識し、影響を受けたはじまりでした。 ショートショートに限らず、手に入る限り手に入れて読み、高校の時は文芸部(こんなのを書くのは恥をさらすようで恥ずかしのではあるが)だったので、思いっきり影響を受けた作品とも言えないような駄作を書き、自分の人格の一部を確実に作り上げた人物です。多分、そんなのは私だけではないはずです。 おまけに、星新一が書いた2冊の彼の父の伝記は、自分の今の仕事のスタイルに影響を与えているぐらいです。 大変、父親の会社の清算でご苦労されていたであろうことは、エッセイ集などでも何となくわかるのだけれど、具体的にどんなご苦労をされてきたのかまでは今一不明ではありました。そんな、星新一の伝記が本作です。父親と祖父に関しては、優れた評伝をすでに星新一自身が書き上げていますので、語るまでもなく。なんというか、抜き書きに解説をつける気にもならず、ただ書き遺しておこうと思います。 「スポーツなんかやって頭が空っぽになっちゃったら、なんにも書けなくなるよ。頭をもやもやさせていないと書けないんだよ、小説なんて」(上P.8) 星一は戦前には衆議院議員、戦後初の参議院選挙では全国区でトップ当選を果している。(上P.26) くもり ソーカイ ゴタゴタ アーソーカイ(上P.228) 「宗教は信じるものだけれど、科学は信じるものではない。理解するものだ」(上P.325) 城山はこのとき(「人民は弱し、官吏は強し」の発表時)、大正の全盛期には三井三菱を圧倒するほどの商社だった鈴木商店の倒産を描いた『鼠』を発表したばかりだった。(下P.144) そんなものが文学の枠組みだというならば、枠の外にあって結構、それこそショートショートの名誉である。(下P.178) SFを牽引してきたにもかかわらず、SFが盛り上がるころには、SFの読者は自分から離れている。なんとも皮肉な話ではないか。(下P.207) 「あなたねぇ、文学賞を取るか、本を売るか、どちらかにしてくださいよ」(下P.215) 「子供をばかにしてはいけない」(下P.262) 「星さんは、作品に魂を売り渡してもいいと思っていらした」(下P.299)
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Last updated
September 27, 2011 11:36:19 AM
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