フラメンコギターと木について ふと思う
代表的なフラメンコギターの中で「コンデ・エルマノス」という有名な工房がある。昔から今日まで 様々なギタリストが愛奏してきており、多分 フラメンコでは一番有名な老舗であろう。実際 僕の周囲でも使用しているフラメンコギタリストも多いのだが、どういうわけか 僕には縁がなかった、多分 スペインで習った師匠達が、それぞれ 土地のギターを使用していたことも起因しているのだろう、そもそも その土地で マドリードに工房を構える「コンデ・エルマノス」をどう購入するのかなんて考えもしなかった。(意外と 外国の大都市のほうが こういう楽器がたくさんあったりしますよね)さて 今回 縁があって 1960年代のコンデエルマノスを試奏する機会があった。(読んでくれている ギター弾きのために 一応書いておくと黒ギターと呼ばれる種類のものです)実際問題 僕よりも年上のそのギターは、人間と同じように、それなりの傷もあるし いくつか修復の手も加えられているのだが、実に「フラメンコな音」がするのだ・・・木全体が ひとつになって 自分に返ってくる一体感みたいなものは、正直 今まで経験したことがない感覚だった僕は 物事を「新しいから・・古いから・・」とか「有名だから」とか「みんなが使ったいるから」とかできるだけ、そういう尺度で判断しないように努めているけど、(ささやかな参考にはするけど)このギターは そういう判断を超えて 純粋にフラメンコを感じることができる一本でした。正直 それが 年月によるものなのか 今までの使用者の弾き方なのか、木材の問題なのか 偶然なのか 僕には全く判断できないのだけど、こういうギター つまり自分と共にひとつになってフラメンコに向かっていける相棒と呼べるギターに出会うことは、多くの人が望んでいるのではないだろうか・・このギターは すでに買い手が決まっており 僕の手元に来ることはないわけだが、こういう感覚を想起させてくれただけでも感謝したいと思う。例によって 今の自分のギターの50年後どうなっているのだろうか・・なんて妄想しつつニヤニヤしていると 奥さんは言う「ところで、あなたは その頃生きてるの?」となるほど! 木に比べると 人間の寿命は短い!こうやって 様々な想いをのせて、木(ギター)も継承されるのだろう・・・