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1985年 天に、ひと葉、増しぬ 『月の猫』最終節●南へ● 最後に── 青楓、青柳、青草、葉分けの風。 季節の言葉。 青楓は楓の若葉のこと。 ひかりに満ち溢れ、草分けの風がみずみずしく薫る中、 君は生まれた。 私は今、この窓から青楓が茂る様子を眺めている。 幾重にも重なり合う青葉を見つめていると、 ふと、「結び葉」という言葉を思い出す。 昔の人は楓の若葉と若葉が重なり合う様子を「結び葉」と呼んだ。 なるほど、楓は手のひらを広げたかたちにも似て。 それはまるで、手をつなごうとして懸命に伸ばしているかのよう。 楓さん。 君の人生は美しかった。 君はよい友を得た。 君が生きて在るとき、 私たちは毎日毎日、君のことを思った。 大切で大切で仕方がないと言い続けた。 愛しているんだと手を握りしめてきた。 だから喪失感には苛まれなかった。 君を支え続けた誇りと、約束がひとつ、残った。 楓を知った私たちは、結び葉のように、 互いに手をつなぎ合おうとしている。 たくさんの手が楓の手をとり、さらにその手が重なっていくのが 私には見える。拍手が聞こえる。 これからも、きっと誰かがそっと、 今日という日に、思いを至らせてくれるだろう。 永遠の15歳を、祝ってくれることだろう。 ◆応援ありがとうございます! 次回更新は箱根用水通水の日、5月初旬を予定しております。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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