『美しき愚かものたちのタブロー』原田 マハ
松方幸次郎―川崎造船所の社長であり、西洋絵画の収集家です。この人が戦前にイギリスやフランスで買い集めた絵画(タブロー)のおかげで、戦後、国立西洋美術館が開館した、という長いお話です。いわゆる「松方コレクション」ですね。戦前の資産家は自分の財産を投資して学校を作ったりしたものですが、松方幸次郎も日本に本格的な西洋美術館を作って日本の青少年に本物の西洋絵画を見てもらいたい、という思いだけで私財を投資した。自分は絵のことは分からないと言いながらもパリやロンドンの画廊主や日本から留学していた美術研究者の助言を信じ、「絵よりも人を見て買っていた」と言われている。現在の資産家や政治家は日本の将来を担う若者たちのことなんか少しも考えずに、自分の私腹を肥やすことばかり考えている。世界がギスギスしているのも人間の心に余裕がないからでしょうか?こんなときこそ、絵画や音楽など世界共通で、言葉が通じなくても分かり合えるものが必要なのではないでしょうか。美しき愚かものたちのタブロー [ 原田 マハ ]