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本ちょこっとかじり虫

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2021年10月の記事

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『きみはだれかのどうでもいい人』伊藤朱里

舞台は県税事務所。地方公務員の年代が異なる4人の女性職員が語り手。初めての作家さんでしたが、流れるような文章で、読みやすかったです。公務員といえど、滞納処理などの過酷な業務でお客様（住民）から罵倒されたり、脅されたり、言葉の使い方にも神経を使う仕事です。仕事をうまく回そうとすると、人間関係がギスギスする。語り手が変わると、問題の見方も変わる様子がうまく描かれている。職場の人間関係って難しいですね。特に今は、役所にもアルバイト職員が大勢で、年上のアルバイトを年下の正職員が指導しなければならない。人件費を削ろうとして、非正規職員を増やしても、人間関係がうまくいかずに心を病む人が増えれば、仕事の効率も悪くなるし、本末転倒のような気がします。きみはだれかのどうでもいい人 [ 伊藤朱里 ]

2021.10.27

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『緊急事態下の物語』

5人の作家のアンソロジー。尾崎世界観、金原ひとみ、東山彰良は読んだことがあるが、真藤順丈と瀬戸夏子は初めてでした。作風が違うので面白かった。こういう本で新しい作家を発見できるのはうれしい。「母の不倫相手がコロナ陽性で中学生の娘と父が濃厚接触者になってしまう」世間にはこういう事案もあるのかな。緊急事態下の物語 [ 金原ひとみ ]

2021.10.20

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『朔が満ちる』窪　美澄

暴力の絶えない父の頭を斧で殴った13歳の少年。母と妹を守るため。13歳までは事件を起こしても罪に問われないのを知っていて実行。ところが、斧の刃でないほうで殴ったため、父親を殺すことはできなかった。マキ割りは父親の役割だったが、普通の親だったら中学生の少年に手伝わせるだろうと思うが、斧の使い方を知らなかった。息子が大きくなるのを恐れていたのかもしれない。半身不随になり母が介護することになるが父から離れられない母の気持ちも分からない。うまく人間関係を構築できないまま成長した少年。父親が死んでいたら違っていただろうか。虐待を受けて生き残った子供を「サバイバー」と言うそうだ。あまりにも悲しい言葉だ。心に傷を抱えたまま生きるより、子供のまま死んでしまった方が幸せなのか？朔が満ちる [ 窪　美澄 ]

2021.10.17

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『邪教の子』澤村伊智

タイトルに引かれて読んだ初めての作家さんです。前半は、新興宗教にハマり、足が不自由で家に閉じ込められている娘を母親から救い出す同じニュータウンに住む3人の子供の話。その中心になった女の子が大人になり当時の事を語る。後半はテレビディレクターがニュータウンそのものがカルトではないかと疑い取材する。前半からは想像もしなかった展開でした。ただ、巻末に参考資料が掲載されていて「登戸研究所」に関する書籍があったので、カルト宗教と何か関係あるのかな、と気にしながら読んでいたら、最後のほうに「ボツリヌス菌」「マスタードガス」が出てきて、後悔した。「最初に巻末なんか見るんじゃなかった」楽しみが半減してしまう。邪教の子 [ 澤村伊智 ]

2021.10.13

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『植物忌』星野智幸

コロナ禍以前に書かれたものですが、脳も心臓も無い植物に侵略されていく人間が、目に見えないウイルスに振り回されている今と重なってきます。地球上のものは何でも制御できる、なんて考えている傲慢な人間を風刺しているようです。植物忌 [ 星野智幸 ]

2021.10.10

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『MISSING 失われているもの』村上龍

物凄い精神世界を自身の幼少期からの記憶だけでこれだけ描き上げるなんてビックリ。小説家も含めて芸術家は自分の中に渦巻いている行き所のないエネルギーを放出することでしか自分を安定させることが出来ないのではないか、と思う。MISSING 失われているもの [ 村上龍 ]

2021.10.03

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