『街とその不確かな壁』村上 春樹
後書によると、1980年に雑誌に書いた小説を40年経って書き直したそうだ。強固で決して壊れない壁だが不確かで必要に応じて形を変える。そして、壁の中に住む人は影を持たず、外側には出られない。壁で囲まれたパレスチナ自治区を連想してしまう。「壁」というと、イスラエルの文学賞を受賞した時の講演「壁と卵」を思い出す。「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます」と言っている。改めて、これが純文学なんだな、と思った。明確な答えは示さず、読者に考えさせる。モヤモヤするな。街とその不確かな壁 [ 村上 春樹 ]