『蟹工船』と同じプロレタリアの雰囲気がぷんぷん漂ってます。
でも女性の視点で描かれているので、「労働者はブルジョアに搾取されてるんだぞー」という感じが少し抑えられているような気がします。
母乳を売るというのは、乳母とは違い、雇い主の若様に飲ませる乳を一日に何回も搾ることなんです。
若様は乳飲み子ではないけれど、人乳しか消化できない体。
自分の子には牛乳を飲ませて我慢させないと乳の量が足りなくなり、奥様に叱られる。
現代では乳を売る仕事なんてないけれど、働いても貧乏なのは今も同じ。
戦前の格差社会は戦後60年以上過ぎた今、再び繰り返すのか
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
わが子に与えるべき母乳すら売らねばならぬ貧しき女性の痛切な姿を刻む「乳を売る」、女だけの催し"五月飯"の日の老女らのユーモラスな振舞いを通し、哀しくも逞しく生きる寒村の女を力強く描いた「朝の霧」等、戦前・戦中の七作品に、自らの文学の核となった少女期を回顧した晩年の作二篇を併録。プロレタリア文学に母性という視点を加え、虐げられてきた女性の新たな目覚めを追究する著者の精選作品集。毎日出版文化賞受賞。