ドイツ、フランスに見る国際会計基準との付き合い方
国際会計基準のアドプション(日本における丸呑み)が必然のような発言をする人が、たまにいます。しかし、週刊経営財務6月21日号によれば、ドイツ・フランスとも国際会計基準は導入するものの、ほどほどのつきあいにしているようです。三菱電機常勤顧問の佐藤氏の報告によれば、EUで国際会計基準が導入されていると言われていますが、すべての上場企業に国際会計基準の適用が義務付けられているわけではなく、対象は限られます。欧州では、取引所の中にEU規制市場と取引所規制市場の区分が存在しますが、国際会計基準が必須なのはEU規制市場の連結財務諸表のみです。取引所規制市場は、連結を含め、取引所がどの会計基準を認めるかを決定しています。例えばドイツ証券取引所ではEU規制市場に上場する会社は300社程度で、全上場企業10,000社の3%に過ぎません。その他の会社は従来どおり連結・単体とも自国基準での財務報告が認められています。配当計算と課税所得計算の基礎となる単体財務諸表については、イギリスを除いて、EU規制市場、取引所規制市場とも、国際会計基準の適用は認められていません。ドイツは、国際会計基準に基づく財務諸表の目的はあくまでも投資家に対する情報開示であり、ロンドンに拠点を置く民間機関の設定する会計基準である国際会計基準にもとづいて、配当計算や課税所得計算、または債務超過の判定を行うことはないと考え、今後とも国家主権に関わる問題として自国基準を堅持していくようです。フランスも単体の財務諸表は税務計算に使用するので、自国基準を堅持していく考え方です。単体基準を国際会計基準に近づけることについて、日本ではコンバージェンスとして頑張っていますが、ドイツは議会の反対により国際会計基準に近づけることは実施されていないようです。ふりかえってみれば、大騒ぎして導入されたSOX法(内部統制に関する規制で、日本では金融商品取引法の一部)の効果はどうだったでしょうか?会計士丸儲け、製造業はコスト増、粉飾決算防止には全く効果なしではなかったでしょうか。国際会計基準については、金融庁の慎重な対応を期待したいところです。