丹下健三 「一本の鉛筆から」
人間の記録 57【1000円以上送料無料】丹下健三 一本の鉛筆から/丹下健三NHKで丹下健三氏の建築の特集を見たので、さっそく図書館で予約して読みました。日本経済新聞の「私の履歴書」に加筆した自叙伝です。数々の建築・都市計画を手掛け、常に独創性をめざした氏の経験談は大変面白かったです。天才といった側面もありましたが、昭和の日本人の元気・パワー・チャレンジ精神も感じました。アラブでは王族と付き合うのですが、先方の段取りが悪くてキッチンで一夜を過ごしたこともあったようです。東大教授として大学紛争で馬鹿(文化大革命時代の中国の受け売り)で礼儀をわきまえない学生相手に苦労したのはお気の毒でした。定年退官してから自分の事務所で好きなように仕事ができて本当によかったようです。ところで中国について以下の記述は興味あるものでした:「最近では、中国の国家計画委員会と北京市から、5人の建築家を2か年研修させてほしいと頼まれた。喜んでお引き受けするが、なるべく若い人にしてください、と申し入れてあったのだが、北京市に招待されていってみると、一番若い人が38歳、最年長は52歳であった。なぜといぶかると、今、38歳以下の者は、文化大革命のために専門教育を受けてはいない、という返事であった。中国にとって、この15年近いブランクを取り戻すのは、大変なことだなと思った。」こういう本は電子書籍にしてもらえれば座右の書としてクラウドに長く収納できるのにと思いましたが、amazonですらその予定はないようです。改めて、「丹下氏の建築を巡る都内散歩」をしてもよいかなと思いました。丹下氏の建築というとコンクリートのものが多いのですが、表参道のハナエ・モリ・ビルのように今風のガラス張りの建築もあるので、いろいろ楽しめると思います。