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2008年08月28日
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カテゴリ:読書ノート
えーと、ネタバレしてます。ネタバレすると、この本は読む面白さが激減すると思われますので、以下、読む気はないからネタバレしてもいいという人と、もう読んだからという人だけ読んでください。

             

              

                



文庫本の後ろには、名作『白夜行』の興奮がよみがえる傑作長編と書いてあるし、本編を読めば、どうやら、ヒロインは、『白夜行』の雪穂と同じ人物らしいと、想像できる。あとがきでは、『白夜行』の第二部とも書いてもある。

しかし、この本を読んでみて、私としては、この作品は『白夜行』の 書き直し だと、思う。

『白夜行』では、かなり伏せられていた、多くの事件の詳細や二人の男女の関係性が、幻夜では、かなり詳しく書き出されている。「白夜行」で、19年がかりの話だったけれど、この『幻夜』では、五年くらいの間の話になっている。『白夜行』では、かなり挙げられていた社会的事象も、『幻夜』はサリン事件くらいだ。

たぶん作者は、前回あまりにも、トリックを駆使しすぎて、名作ではあるけれど、懲りすぎて作者の意図が伝わりきらず、よみこめないつくりにしすぎたかもしれないことを考えて、『幻夜』では、主人公雅也と、ヒロイン美冬の二人の最初の出会いから、その後の関係性、までをかなり明確に書き出しているし、二人でおこなった事件も、かなり克明に描き出している。

『白夜行』は、トリックすぎてわかりずらかったし、テレビドラマ化においては、そのテーマはあきらかに、改変され、原作では分かりづらかった部分を詳細に説明するようなものになっていた。

名作と評されながらも、けれど、作者の意図は、伝わらずに終ってしまったことが、今回の作品へと、つながっているのではないのか。

自分の正体を隠し、自分の身を守り、企業して、経済的成功をめざし、そのためには、自分の周りの男たちを使い、どんな犯罪も、殺人もいとわない冷酷で非情な美女の物語。

そういう話だけれど、作者ははたして、冷酷な魔性の美女が書きたかったのか。物語としては、見事なまでの美冬の行動にひどいと思いつつ、すごいなという面白さはある。

けれど、作者がこの物語で書き出そうとしているものは、なんだろう。

「世の中はもっと悪くなる。自分の懐をこやすことしか考えてない連中がこの国を仕切ってるんだから当然のことだ。今までは庶民が強かったからなんとかなった。だけどもうだめだ。がんばりにも限界がある。」

これは、作中の第11章、刑事の加藤が雅也のつとめていたフクタ工業の社長に会いに行ったときに社長の福田が言った言葉だ。

一人の女がこんな行動をとればそれは、犯罪であり、ひどいことだけれど、それを同じようにしていても、それが企業であれば、どこかで許されてしまう。

底辺にいる人間がどんなにがんばっても成功することも、のし上がっていくことも出来ない社会。

そして、企業ですら、社会的不正や、偽装や、犯罪ぎりぎりのことをしていかなければ、維持できないような社会。

美冬ほどの才気があれば、こんな犯罪をしなくたって、企業家として成功できそうな気もする。それでも、今の社会では、無理なのか。

雅也も美冬もフクタ工業の従業員も社長も雅也の父親もみんな社会の底辺に近いところで生きている。のし上がっていくことも人並みの普通の生活をすることすらも、もう、この国では難しいことなのだろうか。


もしも、これが、『白夜行」の第二部だとして、もし、第三部が描かれるとしたら、どうなるんだろう。
一部、二部では決して、暴くことのできなかったヒロインを暴きだすのは、だれだろう。たぶん、男性には無理だろうな。『幻夜』の中でも、「女のことは、女でないとわからない」と、ヒロインの夫の父親に言わせている。
だとすれば、ヒロイン美冬の正体を突き止めるには、女性の目が必要だろう。たとえば、第三部で美冬の正体を暴く人物がいるとしたら、それは『幻夜』の中で、美冬に夫を殺された曽我の妻、雅也に惚れていた美冬の義理の姉頼江あたりじゃないかと思う。けれど、やっぱり女だけでは、突き詰めきることは出来ないかもしれない。やはり男性もまた、必要だと思う。美冬にかかわれば、どんな男でも、彼女の魅力に捕らわれてしまうとしたら、決して彼女に直接会ったり、関わったりしてはならない。その上で、女性を裏で補助する男として、刑事加藤の父親で、それも、元刑事という高齢の世の中のすいも辛いも知ったような熟達した男性が必要かもしれない。
こんな登場人物も用意して、第三部、美冬激闘編なんかできると、面白いかもしれないですね。

今の社会はとても厳しくて、のし上がっていくこと、経済的に成功して幸せになることはとても大変なことかもしれないけれど、人の幸せは、それだけじゃない。夫や家族を愛して日々ささやかに暮らすこと(曽我夫妻や、新海夫妻のように)も、人の世界の知を突き詰めて知り抜いていくこと(加藤の父親のように)も、人が人として情を持って生きていくこと(頼江と雅也の関係のように)も。と、そういう、世界があってもいいと、。

分厚い本でしたが、それなりに気合をいれて読破しました。東野圭吾の本はドレも分厚いので、持ち歩くのが大変。です。バックの中でおもくてーーーーー。









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最終更新日  2008年08月28日 23時17分02秒
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