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テーマ:本のある暮らし(3311)
カテゴリ:本のはなし
自費出版大手の新風舎が事実上倒産。やっぱり訴訟の影響が大きかったんでしょうか…。会社側に落ち度がなかったとは言わないけれど、これで倒産となるとちょっと同情します。
詳しいところは各種報道で確認していただきたいのですが、大雑把に言えば、「(新風舎は)自費出版した本が全国の本屋に並ぶと言っていたのに、地元の一部の本屋にしか並ばなかった」と訴えられてます。 まあ、たしかにそうなんだろうけど。大人なんだから、冷静に考えればわかるだろう…とも思うのでした。 だってさ、全国の書店に確実に並べたいのならもっと大手の出版社から(自費ではなく)普通に出版すればいいわけで。そういう大手の出版社が出版しないということは採算が取れないからだというわけで。 大手の出版社は、印刷やらデザインやらの実費もさることながら本を売るために営業さんが全国の本屋さんを回って注文取ってるわけですよ。それなりのお金をかけているのです。それでも本が売れないと嘆いている時代。自費出版の本がそう簡単に全国の本屋に並ぶわけがない。 自費出版の出版社はどんな原稿でも褒めておだてて自費出版させるらしいとは聞いていました。全国の本屋に並びますよ…とも言ったでしょう。それは大げさだったでしょう。うまく乗せられちゃった人もいるでしょう。その点は反省すべき点もあるでしょう。たしかにやりすぎだと思える部分もありました。それを訴えるというのならそれも仕方ないかと思うけれど。 正直言って、騙されるほうも騙されるほうだという印象もぬぐえませぬ。 訴訟については当事者同士の問題なので置いておいて。 全国に本が並ぶっていうのは、半分はものの例えではないかと、私などは思っていました。従来の自費出版では書店で流通させるのって難しかったのではないかと。その点、新風社などでは店頭に本は並ばなくとも書店で注文すれば手に入る、というのがウリだったんじゃないかなぁ。場合によってはネット書店でも注文できるという。 だから、例えば自分のサイトなりブログなりで本の宣伝をすればどこの誰だか分からない人でも自分の著作を買ってくれるかもしれないわけです。それってすごいことです。たとえ書店の店頭に本が並ばなくても、書店で手に入るっていうのは大きな魅力だと思います。 実際に私も知人の出版した本をネット書店で買ったことがあります。完全な自費出版ではなくてたしか共同出版だったと思います。出版社が費用の何割かを持ってくれます。原稿の出来を見て、その割合を出版社側が提示してくれるらしいです。売れそうな原稿ならば全額出版社側が負担という場合もあるみたいです。 全国の書店の店頭に並ぶ自分の著書を見たかったら、その本を一生懸命宣伝して話題を作り、全国の書店が注文したくなるような状況にすればいいのです。個人でやるのは至難の業かもしれませんけれど、実際、自費出版からベストセラーになった本というのも最近では少なくないですから非現実的な話ではありません。 出版直後に、もし本当に全国の書店に本が並んだとしても、それっておそらく一瞬のことです。本屋のスペースは限られているので、毎日届く新刊本に押されて売れない本はさっさと返品されます。数日置いてあればいい方で、場合によっては店頭に並ばずに即返品ということもあります(そういうことをちゃんと説明しなかったっていうところが問題なのですよね…)。だから、どちらにしても“売れる”本でないと書店の店頭には並ばない可能性が高いと思われます。 私の印象では、新風舎は賞を設けたりして積極的にいい原稿を探していたような気がします。おそらく賞に漏れた人にも出版をもちかけたりはしていたと思いますが(その過程で度を超した営業があったかもしれませんが)、敷居の高い大手出版社からの出版を諦めた人にも門戸が開かれているというのはいいなぁと思っていました。だから、自費出版のノウハウを持つ出版社がひとつ消えてしまうというのはちょっと寂しい気がします。 今後、再建の道を探るようですので、これから出版する人にもこれまで出版した人にも、訴訟している人たちにもいい方向に向かえばいいなぁと思います。倒産したらお金取れなくなっちゃいますからね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 8, 2008 05:23:42 PM
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