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Jan 12, 2010
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テーマ:生き方上手(688)
カテゴリ:社会・ニュース
寒いので、今朝のお散歩は省略。チワワの小太郎もホットカーペットでぬくぬく。人間もぬくぬく。怠惰だわ~。でも幸せだわ~。

ぬくぬく

勝間和代さんと香山リカさんの対談本を買ってみました。先日書いた、「勝間和代×香山リカ対談はバカの壁」という記事にはいまだにコメントがついて、みなさん興味・感心があるのだなぁと思うのですが、この記事のもとになっているAERAに掲載された対談の内容はこの本の一部だったみたいです。

 勝間さん、努力で幸せになれますか
↑帯にはお二人の写真と共に「激論350分」とあります。何度かに分けて対談したみたいです。

AERAの対談のほうがエッセンスが詰まっていた気もしますが、相変わらず不毛なやりとりが本一冊分。

一番面白かったのは、最後の部分。お互いに「あとがきにかえて」手紙という形でコメントを掲載してあるんですが、勝間さんは香山さんに「またぜひ、その鋭い質問力をこれからも炸裂させてください」と今後の交流を求めているのに対して、香山さんは「“上昇の勝間さん”と“下降のカヤマ”の住む世界は今後、ますます距離が離れる一方で、またこうやってひとつのテーブルをはさんで話す機会などもうないようにも思います」と暗につきはなし、「どうぞお元気で」と結んでいます。対談を終えて、香山さんは勝間さんとの対談(交流)を続けても得るものはもうないと思ったんじゃないかなぁ。私の勝手な想像ですが。

不毛だというのは、この本を読んでもおそらく幸福にはなれない、という意味。例えば、対談を通して1+1=2以上の実りある提言が導き出されたり、新しい価値観を発見したり…そういうことは、この二人の間ではないように感じました。

勝間さんの文章を読んでいるとよく「あれ?」と思うことがよくあって、「例えば○○ですよね」という前提について、「ん?」と思ったりするのだけど、新聞の連載記事などだとその前提をそのまま受け入れて全部読むしかない。あれ?と思っても全体としては間違っていないような気もするし、なにがおかしいのかよくわからない、ということもあります。

そういう点について、対談の中では香山さんが「ちょっと待って」という感じで鋭く質問してくれているので、痛快でした。

勝間さんが「外国人が道に迷って地図を広げていたら声をかけますよね」と言えば、香山さんがすかさず「そうですか?ある小学校では『知らない人に道を聞かれたら走って逃げましょう』と教えている、って聞いたことありますよ」と返す。

「日本には『やる気がない人』を責めるような風潮がありますよね。『お前はやる気がないからうまくいかないんだ』みたいなことを言われてしまうのが、その人たちを苦しめる原因だと思うんです」って、これ勝間さんの発言。「やれば、できる」の勝間さんがこんな発言を! それに対して香山さん「でも、私は『やる気がない人がいたっていいじゃない』と最初から言ってますけど、勝間さんはそのやる気がない人にはきちんと教育の機会を与えてトレーニングをするべきだとおっしゃいませんでしたっけ」と鋭い突っ込み。

35歳独身限界説についても言及されてました。香山さんが「その人たちが35歳で結婚したら、家庭の場でそういった学習ができるものなんですか」と言えば勝間さんが「全員ができるとは思いませんが、少なくとも学習の機会は手に入れます」。すかさず香山さんが「機会を手に入れるために結婚するなんて、相手もあるし子どももあることだから、学習に失敗したときには家族へのダメージも大きいし、だいいち迷惑じゃないですか」。コントみたい。

別の場面で、「これはモデルを組むとわかりますけれども、全員のアリが働くとハイパー競争になってしまって、アリたちがくたびれてしまうんですね。なので2割のアリが一生懸命に働いて、残りの8割が適度にサボるくらいで、実は社会の最適配分になるという理論があるんですよ」と勝間さん。

「だとしたら、さきほどの『無駄』だってOKじゃないですか。自分は8割派だと思って、職場でもお茶をすするなり、同僚の悩み相談やグチを聞くなりしながら存分に適当にやってよいことになりはしませんか」と香山さん。

勝間さんの答えは「むずかしいのは、その8割の人たちが幸せを感じる社会ではないというところです」。むむむ…。なんか、煙に巻かれてる気分。

香山さんの質問に対して、論点がずれたような答えがされてる気がするんだけど…。こんな感じでなんだか噛み合わない会話が続いて結論は平行線。香山さんが言っていることは一貫しているんですが、勝間さんが言っていることはなんだか支離滅裂。結局何が言いたいのかよくわかりません。そういう仮定からどうしてそういう答えが導き出されるのかがよくわからない。最初から答えありきで、そこに行き着くように、ときには香山さんの意見に同調しながら自説を無理矢理はめ込んでいるみたい。仮定も答えもそれぞれはあっているようなんだけど、=ではないというか、違う式の答えをあてはめているというか。。。

勝間さんが繰り返していたのは利他的な行為で他人から感謝されることが幸福感につながるということ。それが金銭だったり、会社での評価だったり目に見える形だとわかりやすいからそれに向かって努力するのだということ。そして努力すること自体が楽しいということ。…だと思うんだけど違ってたらすいません。

そして香山さんは、それは金銭でなくてはならないのか、言葉だけではいけないのか、ということを繰り返し聞いていましたが、納得できる答えは得られず。

全体を通しての印象としては、勝間さんは自分がやったことに対して他人から感謝なり評価なりを受けることが幸せのよう。ある意味、他人への依存度が高いのかなと思ってしまいました。香山流に言えば仕事や家族に「しがみついている」のかなと。無償の愛ではないんですよね。見返りを期待している。見返りがないものは悲しいし無駄、と思っている節がある。だから、ゲームとかに没頭している人の気持ちはよくわからないっぽい。

勝間さんは自分の努力によって幸せになる、というような言い方をするけれど、努力の結果を他人に評価してもらってその評価の度合いによって幸福度が変わってくるってことみたいで、それって結局は他人に依存した幸せなのではないかと思ってしまいました。

自分のなかの揺るぎない幸福感ではない。例えば、花を育てて、それが咲いたときに感じる幸福感っていうのは、勝間さん的には低いのかなぁ。でもきっとご本人にそれを言うと、「その花を褒めてくれる人がいれば幸せ」ってことになりそう。そして「花を見て褒めてくれる人が多ければ多いほど幸せ」ってことになる気も。そうなるとなにかが違う…。そっと寄り添って一緒に「きれいだね」と言ってくれる家族がいれば幸せっていうのならわかるけど。

勝間さんの言っている幸せっていうのは、普遍的なものではなくて、とても表面的なもろい幸せのような気がしました。だからかどうかわからないけど、対談の中で勝間さんの発言にはブレが大きい。さっきと言ってること違うじゃん!って思う部分や、論点のすりかえじゃないの?っていう部分もありました。

私は勝間さん本人がどんな意見を持っていようと別にいいのですけど、それに乗っかってしまうカツマーな方々に疑問を持っていました。…が、本書を読み終わって、勝間さん自身もカツマーやご自身を賞賛してくれる人たちに依存しているのかなという印象を持ちました。我が道を行くのではなく、本の売り上げやTwitterでのフォロー数、ブログのアクセス数などで幸福感が左右されているのかな、と。それが垣間見えるから、なんだか「痛い」のかな。勝間さん自身が「理想の勝間和代像」を目指してしまっている部分もあるのかな。

勝間さんの書いたものを読んでいるとよく、「自分が味わった苦労を若い人たちにさせたくない」ということを言っていて、お料理や家事なんかでもいかに効率良く時短するか考えるのが楽しいらしいです。楽しいかどうかはご本人の感じ方なのでいいのですが、それが万人にとって有益である、と思っていらっしゃる節がある。そうでなくても、そう受け取られるような書き方(言い方)をされている。

勝間さんにかかったら、推理小説のトリックと犯人を最初に教えられて「これで本を読む手間が省けたでしょ」と言われそう。ヘリコプターで山の頂上まで連れて行かれて「これで登る手間が省けたでしょ」と言われるようなもの。登山の途中で感じる木々のさざめき、鳥の声、高山の花、道中の険しさ、体力の限界と可能性を体感できずにいきなり頂上の景色を見せられてしまう。それって悲しくないのかな。

そうかというと、日々コツコツ努力しようとも言っていて、なんとなく矛盾もあり。よくわからないのでした。けっきょく、他人の言ってることのいいとこどりしてるだけで、ご自身の中での辻褄があってないのかなとも思ってしまったり。

そんなことを考えていると、最終的には「本は読まないけど、勝間さんのお幸せを遠くからお祈りしています」というような気持ちになり、「お元気で」と書いた香山さん的な心境になってしまったのでした。おしまい。

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最終更新日  Jan 12, 2010 05:20:38 PM
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