日本×エクアドル
●KIRIN WORLD CHALLENGE キリンチャレンジカップ2006 3月30日(木)19:20/大分スポーツ公園総合競技場 ビックアイ/ 36,507人日本代表 1-0 エクアドル代表【得点者】85' 佐藤寿人---------- 後半40分まではジリジリした展開が続いた。ゲームを支配しながら肝心のゴールが奪えない。ジーコ監督が満を持して送り出した久保竜彦(横浜FM)と玉田圭司(名古屋)の2トップも不発に終わった。それでも途中出場の佐藤寿人(広島)が限られたチャンスをモノにしてゴールジーコジャパン発足後、南米勢から初めての勝利を飾った遠藤保仁(G大阪)の負傷離脱によって日本は3-5-2で戦うことになったが、結果的にこの変更で前線から連動したプレスが見られ、チーム全体が守備の安定感を取り戻した。2ヵ月半後に迫ったドイツワールドカップに向け、一応の手ごたえをつかんだ一戦だった KIRIN WORLD CHALLENGE キリンチャレンジカップ2006 日本代表対エクアドル代表のゲームが30日19時20分から大分スタジアムで行われた。4月も近づき大分市内は桜の花も咲き始めたが、夜の寒さはまだまだ厳しい。キックオフ時の気温は10度までがった。それでも36,507人の観衆が集まり、日本代表の戦いぶりを見守った ジーコ監督は予定通り、GK川口能活(磐田)、DF坪井慶介(浦和)、宮本恒靖(G大阪)、中澤佑二(横浜FM)、右サイド・加地亮(G大阪)、三都主アレサンドロ(浦和)、ボランチ・小野伸二(浦和)、福西崇史(磐田)、トップ下・小笠原満男(鹿島)、FW久保、玉田を先発起用した。一方のエクアドルは4-4-2。GKモラ、DFペルラサ、エスピノサらは南米予選を戦った主力だが、それ以外はサブメンバーだ。 時差に予想外の寒さとコンディション調整に苦労したエクアドルに対し、日本は頭から畳み掛けた。ジーコ監督は試合前「前線から守備意識の高さを保つこと」を選手たちに徹底させたという。最終ラインで跳ね返す守備ではなく、前から連動した守りを求めたのだ。この指示通り、選手たちはプレスをかける。苦手な南米勢相手ということで、不用意に飛び込まず、ポジショニングに気を配った。守備でリズムをつかむと回しにもリズムが生まれる。迎えた前半20分、三都主からのクロスに久保がフリーで飛び込む決定機が訪れた。が、彼のヘッドはワクを外し、日本は残念ながら先制点を奪えなかった エクアドルのビッグチャンスは前半33分、ボランチ・テノリオが遠めの位置からミドルシュートを打った場面だけ。しかしこれは川口の手をかすめてクロスバーを叩いたのだ。これだけ強烈なシュートを持っているのが本大会出場国。一瞬のプレーに世界レベルを実感させられた。 圧倒的にペースを握りながら前半はスコアレスのまま終了。後半に入ってからも日本の積極性が光った。約4ヶ月ぶりの代表復帰となった玉田はやや低めの位置から飛び出したり、外に開いてチャンスメークをしたりと、動きが非常にキレていた。久保との連携も徐々に合ってきたが、肝心のゴールだけが遠い。後半20分には、小野のパスに反応し、ゴール前でGKと1対1になる。しかし玉田が右足シュートをDFに当ててしまう。この日最大のチャンスをモノにできず、彼自身もがっくりしたことだろう 期待の2トップにこだわった指揮官だが、こう着状態のまま後半30分を過ぎると、さすがに重い腰を上げるしかない。2トップを巻誠一郎(千葉)と佐藤寿人(広島)に一気に変えたのだ。この采配は見事に的中する。疲れの見えるエクアドルにとって、身体接触の強い巻とスピードある佐藤は嫌な存在だった。そして試合が残り5分を切った時、日本は均衡を破るのに成功する。 小笠原のパス受けたを三都主が速く強いボールをゴール前に送った。その瞬間、佐藤が絶妙のタイミングでニアサイドに飛び出したのだ。「相手DFがマークをぼかすところがあったんで、タメてタメてニアに飛び出すのが有効だと思った。ボールがよかったんで合わせるだけでよかった」と話す彼のゴールで力強く勝利を引き寄せた。ジーコ体制発足後の日本は終盤の粘り強さが際立っているが、今回も同じパターンで相手を倒した。 この試合の収穫を挙げると、アメリカ戦(サンフランシスコ)やボスニア戦に象徴されるが、強豪国相手だと安定感を欠いた守備が落ち着いたこと。相手がメンバーを落としているとはいえ、本大会出場国を零封したことは自信につながる。前線からのプレスに関しても意思統一と激しさが見て取れた。選手たちは慣れ親しんだ3-5-2がやりやすいようだ。積極的に攻撃参加し、持ち味を存分に発揮した三都主を見るにつけ、3-5-2のメリットを感じざるを得ない。けれども指揮官は4バックへのこだわりを捨ててはいない。本番に向けてどの形を軸にするのか。それをそろそろ決断する時期に来ている。 佐藤ら残留ギリギリのラインにいる選手の奮闘も明るい材料だった。「僕はFWの中では一番下。1点で喜べる状況じゃない。結果を出し続けていくしかない」と本人は立場の厳しさを口にしたが、FWは最も混沌としたポジション。最後に滑り込む可能性もゼロではない。さらなる頑張りに期待したい。 課題の方はやはりフィニッシュの精度だろう。期待の2トップの不発は指揮官も頭の痛いところ。中村俊輔(セルティック)不在だとセットプレーの精度も下がってしまい、確実に得点できる形がない。そのあたりをいかに克服していくのか。メンバー選考も含め、ベストな方向性を模索していくしかない。 いずれにせよ、チームに残された準備期間は2ヵ月半しかない。限られた時間を最大限生かすことが本大会での成功につながる。