もうすでにあるかもしれないエコビレッジ
ひとつのシナリオを胸に秘めて・・ビジョンが心に浮かんできました。それはすでにあるものの融合で持続可能な社会が作り上げられるというものです。日常の現実と、理想的有機生活がもうすぐ一致しそうなところまで来ている。双方ともまだ気がつかないだけで、両者ともかなり接近している。 浅間山ろくの裾野の西側をのぼりつめるとそこには深い森の高原がある。その中ほどに位置するこのコミュニティー、そこにアクセスするのは比較的楽にできる。東京から150km。まさしくここは地球上のパワースポットのひとつとしてあげらるはずである。 我々を乗せた赤いレクサスGS450hは厳しい浅間の峠道を難なくのぼりきり森の中を涼しげに通り抜け、清涼としたコミュニティーのアクセス路に入っていった。目前には幅の広いゲートが見える。ゲートの両側はそれほど高くない。アースカラーの、土壁の、新しくもなく、朽ちてもいない、自然に溶け込んだその壁には日本の古い、その感覚はまるで大木を抱きしめたときのような、安らぎを覚える光景である。 そのゲートは木製の大きな扉がついている。ポーターがその扉を開き、この車が入っていく。入るとそこはいきなり日本の森。竹や笹が繁り、水楢や栗、胡桃などの広葉樹が繁っている。そこに車の通れる道が一本、それに小道が2本3本とある。車はそこの自然の木々のアーチを通り抜け奥に入っていく。道には浅間の軽石が敷き詰められている。木と石の懐かしい軽井沢の匂いがする。小奇麗な縄文家屋風の屋根が目前に現れた。それがパーキングである。こぢんまりとしているが屋根にはソーラーシステムが設置してある。ポーターが小道を案内し小さな東屋にたどり着いた。お香の香が気持ちよい。東屋から見る景観は、小道の向こうに美しい花が咲き乱れ、潅木の緑が輝き、楽園のたたずまいを感じさせる。まるで巫女のような白い衣をまとった女性スタッフが現れる。ここで受付を済ませ、このコミュニティーの説明を受ける。 施設は、宿泊棟、レストランのほか、ヒーリングなどのセッションルームがいくるもあるようだ。どの建物もとても個性的で21世紀のものだが決してコンテンポラリーではなく、これが太古の昔にあってもおかしくない風体をしている。しかも和のテイストがある。庭園は多様で箱庭のようなところもあれば牧場もある。森もあれば菜園もあるし、そしてどれもが自然体でやさしい繋がりを見せている。隣接して広大な農場もある。そしてスパ施設。 ヒーリングアートの分野は、マッサージ。これはタイ式もあればインドのアユールベーダなどバリエーションがある。そしてレイキ療法や音楽療法などもある。その他、占星術、タロット、ヒプノセラピー、クリスタルボウル、カラーセラピー、ヨガ、太極拳などバリエーション豊かだ。 そして音楽とアートのギャラリーとアトリエがある。これは有名無名のアーティストたちによるもので、ギャラリーのほか施設内の多くの家屋にその作品が展示されている。 エコとしては、太陽光、風力、水力のハイブリッド電力の利用、太陽光温水施設が組み込まれている。また生ごみ、汚物はEM還元を行い農場に供給し循環させている。施設の細部にわたりエコの工夫がなされている。エネルギーを必要最小限で有効に活用されている。 ここの魅力はなんといってもすべてが自然体であること。ここのコアになるスタッフは自らが有機的生活を日々行っている。たとえば私たちが部屋にたどりつき、下のこじんまりしたオープンエアーのリビングでくつろいでいると外の庭にフルートを持った女性が現れ、切り株に腰かけ夕日を見ながらフルートを吹き始める。とてもその場の雰囲気に合っていて癒される。吹き終えると、中に入ってきて「こんにちは!」と声をかける。「どこから来たの?」と聞くと、名前はナオミさんといって半年前に九州からここに来たのだという。シュタイナー農業を学びながら趣味のフルートを吹いているのだという。ここでの生活の有様をいろいろ話してくれた。そうしているとまた別の音色が外から聞こえてくる。すぐ近くで聞こえるのだけど姿は見えない。ギターとどこかの民族楽器のアーシーなサウンドだ。ナオミさんと外へ出た。彼女が「あの二人また始めたわ。」といいながら小道の先へ案内してくれた。そこは小さなコンサートホール?ライブステージのような場所で二人が演奏に興じている。目が逢うとすてきな微笑を返してくれた。ナオミさんも加わり演奏を続ける。すると向こうの小道から3人女性が歩いてくる。なにやら農作物のかごを持っている。一人はここのスタッフのようだ。挨拶をする。3人は楽しそうに息を弾ましている。ここのハーブ園でいまハーブを収穫してきたらしい。かごにはいい香のする摘まれたハーブがたくさん。二人の女性は3日前からここに滞在していて、その前はニューヨーク、ブロードウェイに二人で演劇を観に行っていたのだと言う。スタッフの彼女はインドでアユールベーダを学びここに来ている。その彼女が、「このフレッシュを使ってみんなでハーブティーでも飲みましょうか。」と誘ってくれた。彼女はお茶の用意をし、みなもそれを手伝った。ミュージシャンも演奏し終わり、皆でフレッシュのハーブティーを味わいながらスピリチュアルでロハスな話に花が咲いた。 ここにチェックインしてまだ一時間もたっていない。 こんな時間の流れをここは自然にかもし出している。