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2006年12月03日
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カテゴリ:芸術と文化
音楽による癒しの本質 ゲスト恵田 拓氏
コーディネーター 藤原 美弥子

芸術的行為とは何だろう。真の芸術体験とは。現代における生活の中の芸術的要素の貧しさを考えると芸術本来の価値や意味がわからなくなってしまうことがある。安直なものがもてはやされ、深淵なものに向き合う集中力をどこかで欠いているそんな時代の風潮がある。恵田さんとお話していると、この方は本当に芸術家なんだなあと実感する。彼のフルートは私たちにとっては特別だ。人生の深みや存在への深い問い、苦悩することの喜び、偉大な芸術家たちを駆りたてた霊感…がど真ん中に伝わってくるようだ。“感じきることは美しい”とはトラークルハウスのコンセプトである。魂が注がれた響きを聞くと胸の奥にわき起こるものがあり、それは自分の中の醜と美の格闘なのだと思い知る。感じることの奥深くに本当の自分がいるのだと思う。真の芸術体験によってのみ獲得できるもの、わたしたちのなかの人間本性のなかの永遠へと突き進む努力、この努力なくして“認識から湧き出る確信”に至ることはできないだろう。
ずいぶん前になるが恵田氏にインタビューしたことがある。そのインタビュー文が残っているのでご紹介したいと思う。

以下は2000年2月にトラークル発行の会員様向け情報誌Astralis(アストラーリス)の前身のEmpty Mind(エンプィーマインド) vol.8の抜粋です。

恵田 拓氏に聞く、『音楽の本質について』

藤原:音楽の素晴しさ、恵田さんを通じてたくさん再発見させていただいています。最近ようやく、本当に美しいもの、それがわかりかけてきたような気がします。絶対的な美しさを目の前にした時、人はもう抵抗することをやめて、その美を享受するために無条件に心と身体を投げだすのではないでしょうか。表面的な美にはますます何も感じることができないようになり。

恵田氏:今の世の中は『形だけ表現したつもり』そんなものがたくさん溢れています。インスタントの味に慣れすぎてしまって、本物の味を知らない、知ろうとしない、そんな風潮の中でやっぱり本当に満足したいなら、良いものを聴かなきゃならない。それには出会いやチャンスを素直に大事にしなければならないですね。

藤原:私たちにはどうしてフルートなんだろう、と考える時にやはりフルートは植物的な楽器なんですよね。呼び覚ます力というか…

恵田氏:魔笛といいますからね。(笑)フルートはアシの茎を風がなぞって鳴ったというのが原点です。それからフルートは直接的な発音体を持たない楽器です。そういう意味で、原始的な感覚を呼び覚ますのかも知れません。人の言葉や呼吸がもっともわかりやすい楽器です。発音体をもたないものの透明感が魔を感じさせるのでしょう。

藤原:恵田さんのフルートを聴いていると、時々フルートには聴こえない音色が流れてくるようです。どんな音かというと…

恵田氏:フルートの巨匠でマルセル・モイーズという人がいます。その人が表現した言葉で『紫の音』といわれる音があります。定義づけとしては「吹きすぎて壊れる直前の音」とでもいうんでしょうか。一歩間違えると本当に壊れちゃうので、危険性を伴う表現法ではあるんですけど。

藤原:そういう音に鳥肌が立ちますね。フルートという楽器を超えて聴こえてくる凄みのある音ですよね。表現方法も音も進化してゆくという…クラシックの音の未来はどうなってゆくんでしょうか。

恵田氏:音楽を一番進めてきたのは人の声です。最も凄い表現力が出来るのは人の声ですから。音がそれに合うように追いかけてきたといった方が正しい。楽器も変化して表現力それに伴うテクニックも昔をはるかにしのいできていますから。音楽はインターナショナル化され過ぎて限界といえば限界にきている。下手をしたら面白くなくなっている。個人的には今からもっとつまらなくなっていって、何が良かったのかを考え直す時代になるんじゃないかなと。・・・・・・・・・

いつもわたしたちの投げた球をハートのど真ん中で受け取ってくださる恵田さんは本当に素晴らしい芸術家だと思う。
謙虚さと人間的なおおらかさでいろいろなチャレンジを楽しんでおられるようで尊敬している。12月10日(日)(トラークルハウス主催のクリスマスパーティー)にまた彼のフルートが聞けることはこのうえない幸せだと思い、楽しみにしている。クリスマスを前に人々が気高いものに心かたむけるとき、ファンタジーの霊がそこかしこにあらわれるのだろう。今年もみつろうローソクの輝きのなかでフルートの二重奏でラシーヌ讃歌を聞く時、どんな思いがわきあがるのだろうか。

高貴な人間が何百年にもわたって自らに等しいものに働きかける。
 善き人間が目指すものは、人生という狭い空間の中では到達できない。
 それゆえに人間は死ののちも生きて 生きていたときと同じように働く
 善き行い、美しい言葉を求めて、
 死ぬほど努力したように、いまや死ぬことなく努力する。
 芸術家よ、君は限りない時を貫いて生きる。
 不死を楽しむがよい。
ゲーテ〔芸術家礼賛]
─────────────────────────────────
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最終更新日  2007年01月17日 20時57分04秒
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