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カテゴリ:児童・生徒の問題
20代前半の教師のクラスにかなり濃いグレイのアスペルガー傾向がある女の子が転入してしまった事があります。転入の手続きの時にはほとんどだまっていたので、他の担任も彼女の特徴を見抜く事ができませんでした。仮に、アヤカと呼ぶことにします。 一週間ぐらいしてから、アヤカが強いこだわりを持っていて、行動や思考が直線的であることがわかってきました。その頃にはもうクラスの中で浮き始めています。発言・行動もトンチンカン。自分の事をベラベラしゃべるかと思うと突然話を打ち切る。人の話は聞かない。授業中には「わかんなーい」と大声を上げてパニックになる。アスペルガーの子供は、同年齢の子供との関わりを、なかなかうまく持つことができません。 いじめのターゲットになってしまうまでにそう時間はかかりませんでした。 周りの教師は、この若い教師にとってアヤカはかなり厳しい児童であると思いましたが、もうすでにクラス分けはしてしまって、後に引けません。 周りの教師は1年間、一生懸命にアヤカと若い教師を支援しました。授業中に入り込む、授業を交換するなどもして、なるべく多くの目で見るようにしました。しかし、アヤカのことがかなり影響し、学級は半ば崩壊状態に。アヤカの両親からの担任への抗議は1年中続きました。 せめて前の学校からの情報があれば、と、思いました。後で親から聞くと、前の学校でもかなり厳しい状況であったようです。担任・教頭・校長と、いじめ問題の対応で相当な苦慮があったとのこと。前の学校の担任が何も知らせてくれない事は正直手痛かったです。 子供たちの状況がかなり悪くなっている今日、一人の子どもの影響だけでも、学級崩壊が引き起こされる事はあります。私たち教員が転出入のときにきちんと情報交換をするシステムを持たないといけないことを、痛感しました。2~3週間後に送られてくる指導要録という形式化した情報のみを届ける今のシステムでは、十分な引継ぎはできません。 転出入のときのみではなく、私たちはもう少し子供たちのことを知るシステムを持つべきなのではないかと思います。 実は、アヤカがアスペルガーであるかどうかも、わからないままなのです。そういった障害に詳しい職員がたまたまいたというだけで、その教師を中心にいろいろと調べてみたら、「どうも、アスペルガーではないか」という程度の判断なのです。専門家の診断が欲しいところです。 とはいえ、専門家を呼んで判断することは、両親の許可をがなく勝手にやるとたいへんなトラブルになる可能性があります。許可を得て診断しても、「うちの子がおかしいと言うのですか!いじめはうちの子のせいだというのですか?」と、親が診断に対するやりきれなさを、教師に「怒り」の形で向けてくると言うケースも聞いたことがあります。 しかし、というか、だからこそ、私は、学校と言うシステムの中に、子供たちが持つ傾向・特徴を判断するシステムが必要だと思うのです。自分を知る、親が自分の子どもを知る、教師が児童を知る。これが当たり前になれば、もう少し気分が楽になるのではないでしょうか。 「知る事」を、「烙印を押す事」と捉えてしまうのではなく、これから自分がどう生きていくのか、どうやってお互いが支えあえばよいのかを考えるスタートとして、捉えるべきだと思うのです。 こんなふうに言うと、必ず「それは差別につながる」といった類の批判をされてしまいます。もちろん、慎重な議論が必要で、きちんとしたシステムや社会的なコンセンサスを作り出すことは前提だと思います。 ----------------------- そもそも私は、「アスペルガー」を、「アスペルガー障害」と呼ぶことも、どうかと思います。「障害」という強い(=つらい=親が受け入れがたい)表現を用いる必要があるのかとも思います。「アスペルガー傾向」で十分ではないかと。「麺類好きな傾向」と同じ様な感じで。互いの傾向(=良い・悪い面を含めた個性)を認め合える社会を作るのです。 もし、知能的・体力的・性格的に完璧な人間がいたとすると、ほとんどの人はその人に比べれば何かしらが劣っている事になります。だから、いちいちそれを「障害」と言ってしまわなくてもいいと思います。劣っていると考えるのではなく、人間なんてほとんどみんな不完全であり、不完全さが違っているのだと。ただし、「埋められる差」~「かなり埋めにくい差」、というグラデーションがあり、社会適応が難しい方もおられることに関しては配慮が必要であると。 そして、いかに差があっても、それはそれで、大切な存在であり、その「差」に合わせて、お互いが支えあい、豊かに生きていく方法を考えていければ・・・と思っています。 こんなふうに言うと、今度は実際に厳しい「障害」と対峙している方から、「簡単に言うなよ!そんなの理想!」と、お叱りを受けそうですが・・・
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