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品田知美の空中庭園

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Ayami0719

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カテゴリ:メディア
 きょうの夕陽はとても心にしみた。なぜだろう。
 冬至が間近で、太陽が惜しむように落ちていくから。空気が澄んでいて美しかったから。そして、たぶん、きのうとても弱っていた飼い鳥のインコが元気になって、おしゃべりが聞こえてきたから。あたりまえの日常が危ういものだと、思い出すと夕陽はこんなに美しくなる。
 そういえば、このHPのタイトルには落日、つまり沈みゆく太陽という言葉を使った。落ちるなんて、しみったれているのでは、と思われるかもしれない。でも、私は昇る太陽より沈む太陽が好き。京都では西向きの家が好まれる、と聞いたことがあるが、わが家は夕陽がよく見える南西角部屋だ。その一番西の部屋で私は仕事をしている。
 いまは人生80年とするなら、ちょうど真ん中。これからは折り返しになる。昇るより降りるほうが味わい深い。そういえば、講義準備のために読んだ「コンパクトシティ:持続可能な社会の都市像を求めて」という本に、印象的な引用文があった。「戦術でいちばんむつかしいのは、秩序ある退却をすることである。成長を偶像視してきた社会から成熟社会への移行は、特にむつかしい」英国人ガボールの言葉だ。
 負け組/勝ち組とか格差をめぐる話題でメディアは盛況だ。フリーターやニートになったら大変だ、と親たちは子どもに圧力をかけつづける。みんな「落ちる」のを怖がっている。でも、人生に負けるとはどういうことだろう。収入が低いこと?身体が弱ること?定職につけないこと?私など、社会調査のサンプルになったら、低所得者として同情されるクチである。でも、日常を平穏に過ごしている。人生に勝ち負けなどつけてほしくない。
 勝ち組の象徴、金と地位をほしいままにする人々。頂点はたぶん、最も金持ちの国アメリカの大統領であろう。かの人になりたいと、子どもは夢を持つだろうか。あらゆる面で退却ができないアメリカという国の不幸を一身に背負っているのが彼だ。その大統領を支えるのが、日本のトップたる首相である。
 子どもたちは鋭敏に勝ち組のうさんくささを嗅ぎとる。そして、どこへ向かって歩いたらいいかわからなくなる。鈍感でなければ、勝ち続けることはむつかしい時代だ。降りながら歩き続けること。私が子どもたちに見せてあげられるのは、それくらいだと思っている。





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Last updated  2004/12/11 01:19:09 AM



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