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一部の言葉だけを取り上げられても困る、と政府は火消しにやっきになっているが、時すでにおそし。政府税制調査会の委員発言が話題である。私のお仕事上、気になるので議事録を読んでみた。(http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm)
読んですっかり憂鬱になった。どうやらこの発言は、一人の委員の思いつきにとどまらない。驚いたのは、家族問題に対する委員全般の無知ぶりである。複数の委員の間でかわされる会話に、「だめな家族」という言葉すら入っている。いまどきこういう会話を有識者がしているとは、虚しい限りである。委員名簿をみて、ほっとするやら悲しいやら。家族問題に明るい社会学者は一人も入っていない。経済学者や実業家ばかり。そういう委員のみで、税制改革が進んでいる。無力なるかな、家族社会学者。。。 共通の知識がないところでなされる議論とは、「自分が身近に見聞きした伝聞」にもとづく、たあいもない会話となる。つまりは、誰でもできる会話にすぎず、しかもその「身近」がフツーの人々と恐ろしくズレている人たちの間での会話となるのだから、神経をさかなでされる人が多数出現するのは当然だ。 私が過去10年研究してきて理解したのは、暇な主婦はいるかもしれないけれど、検出限界を下回るほど少ないという現実である。だが、この種の発言は今に始まったことではなく、何十年も前から繰り返されてきた。思い込みというのは恐ろしいもので、主婦たちすら自虐的にそう思い込んできたのではないか。そうでなければ、「家電製品やサービス経済の浸透により、ヒマになった女性が社会に進出するようになった」っというフレーズを、毎日みかけるはずがない。 残念ながら、そのフレーズをささえる根拠となるデータはどうにもみあたらなかった。主婦たちの家事は、そんなに減らせないものだったようなのだ。減らないとなると、「わざと水増ししている」と言い出す人もいる。やれやれ。ところがそういう形跡もみつからない。 素朴な疑問だが、そんなに専業主婦がいいものなら、もっと結婚する女性も増え、男性もなだれをうって専業主夫になってもよさそうなものでは?そうでもないのだから、あまり割にあわないものだったり、なかなかなれないものだったりする、と考えておいた方が無難だろう。 中高年になって、つかの間の自由を手にした時、外にでかける女性が目立つから、遊び歩いている、と感じる人がいるのだろう。休日や定年後に家でゴロゴロしている男性のかたがたは、外に出てこないので、時間のある男性は目立たない。主婦が作り出す時間は、営業職のサラリーマンが日中にする息抜きのようなもの。背広を着ていないからといって、違う目で見ないほうがいい。もしかすると、クールビズを渋るおじさま方は、仕事をしないで「ぶらぶらしている」人と、なんとか見かけの差別化をはかりたいのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/07/24 01:00:35 AM
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