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品田知美の空中庭園

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Ayami0719

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 この街にもどってきて半年が過ぎたところで、うすうす感じ始めた。もしかすると、名古屋は「住みだおれ」と形容するにふさわしい街なのではないか。大阪の食いだおれ、京都の着だおれは現代にもしっかりうけつがれている。日常生活への関心度合いで、いつも物事を考える癖がある私は、「衣食」と来たら「住」はどこだろう、と考えを巡らせたとたん、はたとわが在住の地で見聞きする生活様式が頭に浮かんだ。ちなみに、東京はよくいえば文化のハイブリッド、悪く言えば寄せ集めの都市だから、このような分類にはなじまない。
 ここに住んでいると単に土地が安いから、というだけでは説明できない住環境の水準の高さに感心する。節約するところではしっかり財布の紐をしめ、かけるべきところに大枚をはたくのが名古屋流とはよく知られた態度である。娘3人持つと身代つぶす、とか豪華な婚礼家具などの習慣が知られているが、じつはその家具を入れる器となる住居へのこだわりこそ高い。そういうハコモノがあって耐久消費財である家具も際立つのだから当然ではある。骨董品を扱う店も妙に多い。輸入・国産を問わず質の高い家具を扱う店もめだつ。古い建物も意外と保存されていて、古民家カフェなどはそこらじゅうにある。そういえば、明治村には日本中から運ばれて来た古い建物が飾られているではないか。新しくても「和」な雰囲気をうまくとりいれた住居が印象的だ。その延長に庭づくりやガーデニング、雑貨などへのこだわりがある。街を歩いていて住居まわりの工夫を見るのがとても楽しい。本当によく吟味されて行き届いた作りの家が多いのだ。
 名古屋に転居する前に私が住んでいた街は、雑貨ショップの天国で知られる自由が丘だった。けれど、驚いたことに先日久しぶりに行っても、目にとまるモノは売られているように感じることができなかった。東京では、雑貨は「女子どもが関心を持つもの」に留まっていて、一家の世帯主たる男性がかかわる領域にはなっていない。名古屋ではそこに男性が関与するようだ。心なしか雑貨屋に行くと一人で品定めをしている男性の姿が目立つ。結果として、わりと落ち着いて値ははってもグレードの高い品物の並ぶ割合が増す。もともと婚礼家具のタンスは手堅い財産の生前贈与である、という解釈もあるくらいだ。たかが雑貨、などと考えずに高価でも質が高いものに投資するには妻のみの判断というわけにはいかないからだろうか。
 その延長線上にモノづくりの世界が広がっている。ああ、だからこの街でデザイン博と万博はOKで、オリンピックには縁がなかったのか。いまは大変な逆風にさらされているトヨタだが、この界隈でモノづくりが発展した背景に、このような生活に深く根付いた価値づけがあるのなら、今後もそう簡単にかたむく産業にはならないだろう。そして、「モノの問題」だと常々私が思っている環境問題に名古屋市が熱心な理由も腑に落ちる。あらゆる現象がすーっと一本の糸でつながっていくような爽快感。自己満足ですね(^^;;;;.
 けれども、名古屋という都市の暮らしについて、揶揄でも面白半分でも自嘲でもなく語られた言葉は意外と少ない。それも理由がありそうだ。この街はコトバ、などというモノとちがってかたちに残らないものにはあまりり高い優先順位をおいていない。中央図書館の蔵書数が多いといわれるが、とどのつまりは本などというものにお金をかけない、つまり買わないで借りるという伝統があるのだ。私のような書き物を生業の一部にしようという人間には厳しい習慣でもある。
 それでも、衣食住のうち圧倒的に住への関心が高い私にとって、この街で暮らせるということは幸せかもしれない。周囲に触発されて、暇を見つけると「和」なデザインを取り入れたバルコニーガーデンづくりに余念のない日々を送っている。





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Last updated  2008/11/21 01:20:42 AM



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