金剛流で「杜若」を観る。<日蔭之糸><増減拍子><盤渉バンシキ>と小書が3つ並ぶ。<日蔭之糸>は観世流の<恋之舞>などと似たような装束付けになり、業平の霊と杜若の精、それに業平の恋人高子が重層的に表現するのを視覚化させている。
前に書いたかもしれないが、「杜若」は『伊勢物語』八橋の段に関する、中世伊勢物語注釈に基づく。自分としては、杜若の精が人(在原業平)に恋をしてこうなった、という設定でも良さそうな気もするのだが、そうなると、ゆかりの品を出す必然性がなくなってしまう。業平が杜若の精のために、ゆかりの品を置いていくはずがないからである。でも、女2人に男1人というのはどうもスワリが悪いような……
もう1つ不思議なのは、業平ゆかりの品として「豊明の五節の舞」で舞ったという詞章が出てくることだ。今回の解説でもそれを踏襲しているが、五節舞は女の舞(“乙女の姿しばしとどめむ”の舞)であるはずなので、そこに立ち会った業平と解釈するべきなのだろうが、詞章の流れを見ていると、業平が舞ったとしか思えない。
などと書いているが、わりと好きな曲で、爽やかな初夏の雰囲気を出していただければそれで満足の作品。
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