そこでハメドが見たのは異様な光景だった。マグマの中から生きた生物が出てきたのだ。普通灼熱の炎で死体はおろか、骨まで溶かされるという中から、生きた生物が出てきたのだ。その黒い生物は、先ほど飛び立った龍と同じような形質をしていたが―強い―それだけは分かった。圧倒的なまでの存在感。その眼球で睨み付けられただけで動物的な本能で体が硬直してしまうであろう眼差し。マグマのせいなのか、全てが焦げたような黒い鱗覆われた体。それだけで他の龍が怖がって飛び去ったのがわかる。「こ…・黒龍ミラボレアスだ…!!!」一人の兵士がそう言った。ハメドは聞き覚えの無い言葉だったので、その兵士に問いただした。「ミラボレアス?コイツの名前か!?何故知っている!?」するとその兵士は「俺の村には伝説があるんです…~スベテノリュウヲ、スベテニオイテウワマワルリュウ、ソノスガタハマルデコクリュウ、ナハミラバルカントイウ~…まさか本当に居たとは…。隊長、逃げてください!伝説では村…いや、街をたった一頭で壊滅させたという話もあるんですよ!?」そう、その兵士は言った。しかしハメドは「伝説伝説ってうっせぇやろうだな!所詮そんな話は伝説の産物!俺がここで殺してやる!見てろ!」と叫んだ。しかし、どんなに叫ぼうと、その黒い龍に睨み付けられただけで体が硬直する。正直、逃げたいという思いでいっぱいだった。しかし、ハメドはそんな思いをフッきり、黒い龍に向かってバベルを構え、突撃した!「ウォォォオオオ!!」ガキィィィィン!!バベルがミラボレアスの足に当たったかと思うと、容易に弾かれてしまった。ミラボレアスの皮膚の硬さは異常だった。「くそ…。化け物め…。」しかし、これだけではなかった。マカライト鉱石や大地の結晶といった純度の高い鉱物で製作されたバベルともあろうものが、ミラボレアスに触れた部分から解け始めている!「バカな!?」そう、ミラボレアスの皮膚の温度は尋常ではなかった。恐らく、街の工房技術を全稼動しても出せないほどの熱を発しているのだろう。そして、ハメドは気付いた。黒い龍がこちらを睨み付けている事に。ミラボレアスは胸を反ると辺りの空気を全て吸い込んだ。そしてハメドのハンターとしての本能的な感覚で悟った。恐らくコイツは何かやる。そう、悟ったのだ。そしてハメドは横っ飛びしながら叫んだ。「伏せろぉおおおおおお!!!!」しかしそんな声も虚しく、ミラボレアスが次の瞬間に放った火炎弾はハメドの頭上ギリギリをかすめ、奥に居た、残り少ない仲間達に直撃した。仲間達は全員マグマに吹き飛ばされた。おそらく、超耐火装備でも装備しておけば一命は取り留めたかもしれないが、ハメドの部隊にはその装備をした者はいなかった。「くそぉ…」ハメドは先端が変形したバベルを握り締め、仲間達をフッ飛ばして満足気なミラボレアスに向かって、全力を右手に振り絞ってミラボレアスの胸に突き刺した!!「グォォォオン」ミラボレアスは悲鳴をあげ、若干後ろに後ずさりした。しかし、それでもミラボレアスの胸殻を剥がすので精一杯だった。それどころか、全ての力を右手に押さえつけた為、右腕全体を骨折してしまった。「ぐあぁぁあ!!」痛さで苦痛の叫びを上げるハメド。そこへミラボレアスの鞭のような尻尾がハメドを捉える。優しく触れただけのようでも、ハメドの体は吹き飛び、岩肌に体を殴打した。もはや絶体絶命。誰が見てもそう思えた―
-----------------------------
はい、久しぶりの冒険記ですね^^;これからどうなるか、お楽しみに!(でも期待はしないでねw
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう