テーマ:癌(3550)
カテゴリ:外科医のひとりごと
※注意:あくまで医者の個人的な見解だけなのでそういう目で読んでください。
今日は手術が朝から2件ありまして、一日中手術室におりました。 うち1件目は第1助手で手術に入ってましたが横行結腸の左側という大腸の中では 比較的手術が面倒なところにある癌の患者さんでしたので時間がかかりました。 それでもまあ終わって無事病棟へ戻られました。 予定時間というのを手術前に患者さんとその家族にもお話しするのですが、 お腹を開けてみないとわからないこともあり、予定よりも長くかかってしまうことがあります。 あまりオーバーするときには途中で経過を心配して待っている家族にお話はするのですが、 最近は医療事故の報告も多いためか、 「何かトラブル・ミスがあったんじゃないでしょうね」 的なものいいをされてしまうことが、しばしば経験されまして あまりいい気持ちでいられないこともあります。 心配している家族にしてみれば、まあわからないではないのですが、 以前手術した患者さんのお父さんがそういうタイプの人でした。 その患者さんは残念ながら再発した癌の患者さんで再手術を行いました。 2回目、3回目と手術が繰返されるとお腹の中は「癒着」というものがおきまして、 腸がお腹の壁や腸同士くっついていることが多いです。 簡単に剥がれることもあれば、べったりとくっついていて剥がすのにものすごく苦労することもあります。 これを剥がして手術ができる状態にするだけで30分~2時間とかいうこともあるわけで、 手術時間も大きく延長されてしまいます。 癒着は術前のCTやら超音波といった検査でもどの程度くっついているかという判断をするのは難しく、 正直「開けてみないとわからない」というのが現状です。 そのときの手術も癒着がものすごくて時間がかかりました。 やってるほうも疲れきって、おわって家族に手術の説明をしにいったときに、 そのお父さんが眉毛吊り上げてブリブリに怒ってました。 「なんでこんなに時間がかかるんだ!!」 って言うのから始まって、 「医療ミスしてるんだろ!!医者は絶対ミスしても認めないからな」 「お前らは患者が死んでも大勢の中の1人だからたいしたことないんだろ!!」 まで罵倒されました。 くやしくて涙が出そうになりました。 こっちは患者さんをがんばって治そう、少しでも長く生きていてもらおうと努力をしているわけです。 このときだって別にミスがあったとかじゃないし、やれるだけの手術をみんながんばってやってたわけですよ。 それを一方的にこうまで言われなきゃいけないいわれはありません。 でもね、ここで喧嘩してもなんにもいいことないんですよ・・・。 家族にしてみれば心配から出た言葉でしょうし (ただしこの時はこのオヤジ殺してやろうか!って気持ちになりましたけど)。 「そんなことはありません」 っていって、あとは腹に飲み込みました。 まあ、こういわれてしまうのは家族と医者のコミュニケーションが出来ていなかったとも取れなくは無いです。 家族・親類の全員が手術前に医者と会って十分なコミュニケーションをとる時間はなかなかありません。 大体、患者本人とキーパーソンと言われる人(よく病院にくる家族など) を中心に説明をしていくことがほとんどでしょう。 中にはいよいよ具合が悪くなってから初めていらっしゃる兄弟やら親類などもいまして、 十分に家族から話を聞いてないと、トンチンカンなことを やいのやいの言い出す人って言うのが必ずいらっしゃいます。 「今までろくに病院にも来てなかったやつが横から出てきてかかいまわすんじゃないよ!こっちは患者さんと十分話して治療方針決めて、いままで一緒に頑張ってきたんだよ!!」 といいたくなるような方も中にはいらっしゃいます。 もちろんこちらが至らない事もあるかと思いますが、ろくな情報もないのに 「あれはどうだ」 「あそこの病院でこんなのやってるぞ」 「この薬がいいらしい」 「新聞にこうかいてあったぞ」 なんていって高い薬(医薬部外品、健康食品)をすすめたりする人もいるわけですよ。 患者さんにしてみれば藁にもすがりたいって人ばかりですから一生懸命そういうのを飲んだりするわけですよ。 すべてが眉唾ではなのでしょうけど・・・ はっきりいって効いたの見たことほとんど無いですね。 善意から勧めていると思います。 でも、私は実際に絶対に効かないあやしげな民間療法をして手術を拒否して 最後にはものすごく進行させて結局手術になった人も数多く見てきました。 患者にとってみれば コストと時間の無駄遣い になることも(むしろその方が多い)あることを良く考えてください。 安いならまだいいんですけど、ほぼ例外なく月数万円~数十万単位でかかってます。 自分で買ってあげるならすばらしいんでしょうけど。 主治医の先生とは本人、家族ともよい信頼関係を作ってください。 癌の治療は手術してハイ終わりですとはいきません。 その後も経過観察、定期検査などを数年はつづけていかねばなりません。 不信感をもったまま治療を受けるくらいならセカンドオピニオンを利用するなりして、 自分の受けている治療と自分の希望があっているのか良く考えてください。 納得いかないで治療をしているとどこかでうまくいかなくなります。 それでほかに信頼できる先生がいるなら医者を変えるのもありだと思います。 治療を受けるのは自分ですから。 十分な知識を持ってください。 「お医者さんにお任せします」ではすまない時代です。 今じゃネットで検索すれば誰でも専門知識が手に入ります。 下手な研修医よりはるかに患者さんの方が詳しいです。 ただしお願いも一つ。 そうやって知識を一杯もっていらっしゃる人もいますが、 ものすごく偏った情報だけを持ってくる人がいます。 中途半端にしか覚えてこない。 もうしわけないのですが、ただでさえ混んでいてまわらない外来で その患者さん1人に30分以上時間を掛けて説明してあげることははっきりいってできません。 他の患者さんがみんな予約時間をすぎて待っているんです。 実際待たされて怒って帰る人もたまにいます。 聞きたい気持ちはよくわかるのですが、そういうときは個別に時間をとってもらってください。 長文のマジ話になってしまいました。最後まで読んでくれた方はおつかれさまでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.09.21 12:32:59
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