テーマ:癌(3550)
カテゴリ:外科医のひとりごと
このところ続けて30歳代の癌の患者さんがいらっしゃいました。
ふたりとも女性。 一人は小さな乳飲み子がいて、一人は妊婦さんでしたが病気がわかって中絶されていました。 守秘義務もあるので個人が特定されるような事は書けないのですが、 ふたりとも・・・って感じ。 自分とそう年齢も変わらない。 手術でお腹を切る前から、画像診断でお腹の中の様子=癌の進行状況はある程度わかってます。 でも実際、開腹して思った以上にひどいと 「あちゃー・・・・・・・」 って気持ちになります。 この段階で、だいたいどのくらいの予後があって、どういう経過をたどるであろうことも 大方予想できてしまう。 つらいですね。 10年前くらいだと、まだ患者さんが癌でも本人への告知は家族に告知した後に、 本人へ告げるかどうか決めるということが行われていました。 「気が弱い人だから」 「すごく落ち込んじゃうんで言わないでください」 などというのがまだまだ当たり前の世界。 癌というにしても進行癌を早期癌といいかえたり、取りきれなくても癌は全部とりましたと。 もちろん家族との合意の元にですけど、嘘ついてました。 ところがここ数年で大きく状況は変わりました。 個人情報保護法が出来るくらいの世の中です。 「患者さんの情報は、患者本人のものである」 という考え方が定着して来ています。 簡単に言えば、 「本人には告知しなければいけない」 「本人の了承なしには家族にも病気のことを言ってはならない」 ということでしょうか。 いまじゃ、私はほとんど全告知してます。 本人が聞きたくないといえば別ですが。 あなたの病気は癌です。 進行度はstageは~です。 手術すれば○○%位の確立で治ります。 残念ながら肝臓に転移があります。 あなたの癌は手術できません・・・・・・・・・・ 抗癌剤をつかうとこのくらい生きられます。 副作用はこれとこれと、これが予想されます。 どこまでの情報を聞きたいですか? 医者はどこまで告げればいいですか? とても難しい問題です。 「あなたはあとこのくらい生きられます」というのは、 「あなたはあとこのくらいで死にます」というのと一緒です。 私は患者さんに死の宣告をしているわけです。 結構キツイですよ、言うのも。 オブラートでナイフをくるんでいるようなものですね。 大腸癌は比較的予後の良い癌です・・・・・・進行していなければ。 見つかったときに転移があるとstage4というもっとも重い進行度になります。 stage3と4では予後の成績が雲泥の差です。 stage3までの人には 「しっかり手術すれば治る可能性は高いですよ」 って言いやすいんですけど、stage4となると大変です。 手術ができても追加治療が必要でしょう。 患者さんとは術後も付き合っていかねばなりません。 情報に嘘があると、どこかで必ず医者患者関係がギクシャクしたものになり、治療に 影響が出てくることが多いと思います。 癌と告知されて悲観して自殺・・・・ 一昔前だと本気でそんなことを心配しました。 実際そんな話がありましたしね(私はありませんけど)。 だから本人を一番良く知っているだろう家族と相談をして告知するか決めてもらってました。 今は患者さんでも簡単に情報が手に入ります。 インターネットで検索したら、隠してたって分かっちゃいます。 だからというわけではありませんが、正確な情報を伝えなければいけません。 でも、だからといって事実をそのまま伝えるだけではダメなんですね。 やはり患者さんは癌といわれて大きく動揺します。 心のケアは必要です。 昔ほど癌=死ではなくなってはきましたが、重い病気には違いないのですから。 まあ、そんなことを考えつつお仕事してます。 最近、癌患者さんのBBSとかたまにのぞきますけど、勉強になりますね。 患者さんがどんなことを思っているのか参考になります。 そこでたたかれているような医者にならないように気をつけます・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.09.21 13:09:50
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