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カテゴリ:家族
11日。母の家は暖かでした。私は、朝から入れてあったらしいストーヴを消しました。 「ケア・センターへ行って、夕方帰って来たら、この家も寒いよ。一人やから余計寒い。一日中家におる時はなんとも思えへんけど、誰もおれへん家に帰って来るのは嫌いや」 私はなんともないと思います。ぶつぶつ小言や、バクハツしたようなクシャミに飛び上がることがなかったら、どんなに気分良く暮らせるでしょうか。 「ケア・センターにこの頃ヘンな人が来てるねん。『ナツさんは、ほんまに百でっか』言うてそばへ来てな、『そうです』いうたらアラーの神さん拝むみたいな手つきして、『100歳を頂きます』『100歳を頂きます』いうねん。気色悪いやろ。こっちの寿命が縮むような気がするわ」 あははは。 「私が顔にAを塗ってたら『なにを塗ってはるんでっか?』言うから、『こんなもんです』いうて見せた。『私にもちょっと付けさしてください』いうて顔につけて、1時間ほどしたら『顔がつるつるになりました。ナツさんはシワが少ないと思うたら、ええもん塗ってはりますねんなあ。譲ってください』言うねん。『これは使いかけでっさかい、今度サラのんを持って来たげますわ』言うても『これで結構です。今日は持ち合わせがありませんけど、来週持って来ます』。と勝手に決めて......。ほな横におった人が、『そないええ化粧品ですか』『いいえ、これは化粧品やおませんで。鼻づまりにも目のしょぼしょぼにも耳鳴りにも使いますねん』言うたら、『私も分けてください』言うてはった。そやのに先週は私が休んだから、まだ持って行ってへんしお金も貰うてへんのやけどな」 「よう宣伝しといて。お母ちゃんの生きてる理由は、それやわ」 「いっつも腰をさすってる人があるけど、その人にも見本あげよか」 「あげて。どこにもこんなん、売ってないもんな」
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