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クリニックの女医さんが、「貧血です。胃か腸から出血してます」と言った。 「胃カメラは、火曜日に南大阪医療センターで飲んだばかりです。なんともないということでした」 「じゃあ、腸でしょう。とにかく、検査が必要です」 それで、向かいの建物「キワ病院」へ行った。隣に古い古い建物を残したまま、4年ほど前に新しく建てられた病院だ。向かい側からいつも見ているが、あまり人が出入りしていない。大阪の済生会病院は国道に面しているから、玄関あたりの花壇によくパジャマ姿の患者さんが腰掛けて人や車を眺めている。キワ病院は、花壇が無いからか、誰も外に出ていない。窓から下を眺めている患者さんも見たことがない。よく空いた病院なんだろうと思っていた。レストランなどは、いつも混んでいる所の方が美味しいと決まっている。クリニックの看護さんがショータンを車椅子に乗せて連れて行ってくれた。 処置室で、また採血した。ついいま、向かいのクリニックで血液検査をしたばっかりなのに、クリニックの女医さんは信用されていないのだ。「血が標準の半分しかありません」とドクターは、車椅子に座らせたまますぐに点滴を始めた。 廊下にいる私に事務員が、「お部屋は\7510の個室です」と言って来た。 「大部屋は無いんですか?」 「今は空きベッドがないらしいんです。このお部屋に...と病棟から言って来てます。どうしても大部屋というご希望なら、上の看護師さんにそうおっしゃって下さい」 大部屋のベッドが空くのは3日4日先になるかも知れない。もっと先になるかも知れない。血液漏れの検査ぐらいで何万円も掛かっては敵わない。 「ちょっと本人に訊いてみます」 処置室を覗いたら、点滴の管に繋がれてショータンが一人座っていた。 「7510円の個室しかないって。どうする?」 「ふうん。ほかの病院、訊いてみよかなあ」 病院は此処しか無いわけではない。ショータンは考えこんだ。 廊下の長椅子に戻ると、事務員は記入とサインをしてくれと何枚も紙を持って来た。『病歴』などというのがある。本人は処置室で点滴中なんだから、直接訊いて記入した方が確実だろうに。「万一の場合は、特別な処置を望むか」という項目もあった。手術するわけじゃなし、検査だけで万一になるか? 点滴は、長いことかかっている。病室へ連れて行こうとして、当直のドクターと看護師二人が、思案しているショータンを説得し始めた。クリニックの女医さんも現れた。 「わたしが言った通りでしょう? 入院して検査ですよ」 「このまま帰っても、夜中に意識不明になることもありますよ」 「とりあえずは輸血しないと...」 「南大阪病院の循環器科にずっと掛かってますから、検査入院やったらあっちでした方がええと思うんですけどねえ。河内長野市に住民登録してますし...」 「入院費用は何処も同じですよ」 事務員は、国の「保険適用の入院費用一覧表を持って来て示した。入院費用は同じとしても、部屋代がどーんと違うじゃないの。 「そんな状態で、遠い病院へ行っても受け入れてくれるかどうか判りませんよ。今夜にも輸血しないと...」 よっぽどヒマな病院か、三人が15分も入院お薦めに熱中した。 「とにかく、一旦家へ帰って、入院の用意をして来ます」 とショータンが言って、私がタクシーを呼んだ。
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Last updated
2013.11.22 22:41:37
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