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部屋は二階の、詰所(ナースセンターよりこの方がぴったり)の傍の5人部屋だった。 6つベッドが入るけれど、入り口のそばを一つ縦に置いて5つにしてある。普通に3つ並んだドア際がショータンに当てられた。ロッカーは無く、椅子兼用の整理箱と抽斗つきテレビ台のみ。病院では病気以外なんにもしないショータンだから、こういう簡素なのが好みだ。 処置室から始まっていた点滴は、薬液袋と管の部分を外して、若いドクターとナースとで手早くパジャマに着替えさせてくれた。薬液袋は天井から下がっている棒にぶら下げてあった。 「トイレへ行く時は?」 ショータンが心配すると、「はいはい」とナースは出て行き、すぐにポータブルトイレを持って来てベッドの裾脇に置いた。「チューブ、此処までは伸びますから」 ナースらしいピンクの服を着た若いオンナノコに何か訊いたら、「看護師さんに訊いてください」と言う。看護師さんは、赤い服を着ていた。珍しい。 夜は輸血。晩御飯は無し。いろんな書類に記入したりサインしたりして、私は帰ることにした。頭ふらふら心臓どんどんは今夜のうちに解消して、検査が済むまでおとなしく此処にいるだろう。 外はほんのり夕焼け色の四時過ぎだった。受付カウンターにおじさんが二人座っているだけで、ほかには誰もいなかった。大きな病院には必ずあるタクシー会社と直通の電話は無かった。「10円と100円が使えます」と書いた札が立ててある公衆電話が一つあった。 タレホンカードも使えない。 私の携帯電話は電池切れの上10円玉も切れていて、その電話機に100円玉を入れた。10円分の電話に、お釣りは出なかった。受付カウンターにいるおじさんに、「あの電話は、お釣り出ないんですか?」と訊いた。「出ません」と、叔父さん二人はうすく笑った。毎日かなりの儲けがあるのだろう。 「100円玉は、お釣りが出ません」と何故書いておかないのだろう? いま、昔みたいな普通の公衆電話は無いのだろうか? 町のそこかしこに有った電話ボックスがH族の宣伝屋に占領されて全滅してしまったのは、10年ほど前だろうか? みんなが携帯電話を持っているといっても、私みたいに充電切れさせている人たちの為に、1回50円ぐらいの充電ボックスがあってもいいと思うけど。 玄関の内ドアに、「日祭日の面会時間=1時から8時 平日=午前8時半から午後8時半まで」と張り紙してあった。 「熱、咳、のどの痛みなど、風邪の症状のある人は、面会お断わりします」 ……続く… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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