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カテゴリ:病院
事故以来、S海上火災保険会社からチケットを貰っているタクシー会社の営業所はこの病院の近くだった。顔なじみのドライバーがすぐに来た。 「ご主人は?」 「今日、とうとうここの病院へ入院しました。今週はじめから具合悪かったみたいで」 と話した。「ああ。歩いてはるのが、ちょっとふらふらしてはるなあと思てました」 「昨日、キワ病院へ入ることになってたんですけどね、高い個室しか無いいうからやめましてん。大部屋が満員ということはないのにねえ」 「あそこはね、最初は個室へ入れるんですよ。『大部屋のベッドが空いたら移って貰う』言うてね。温泉ホテルで泊まれるぐらい言いますやろ」 「そうですわ。7510円が一番安い個室。8000円 10000円、12000円。お風呂は入れない病人やのに、トイレ、バス付きの部屋要りませんわ」 「何処が悪いんですか」 「貧血で、何処が悪いのか検査ですて」 「検査ですか。わたしの友達も検査入院して、1週間個室に入ってました。肺がんか判らん言うて、結局、ただの肺炎でした」 「良かったけど、無駄遣いでしたねえ」 「大部屋へ移ってから3週間いましたよ」 「へええ。うちの母も、一人暮らしで寂しい言うてはあっちこっちの病院へ入院してましたけど、お医者さんはみんな『検査しましょ』ですわ。『検査は結構です』言うたら、『帰ってください』です」 母の場合、大阪の病院で、4人部屋に1カ月入って支払が12万円だった。1割負担だから、病院の収入は120万円だ。 月曜日、私一人だけでクリニックへ物療に行った。帰り間際、事務員が出て来て、事故以外だからと金曜日の診療費を請求された。2410円。すぐに支払ったが、この立替えは、ショータンんにまだ返して貰っていない。 火曜日も、ショータンのいるI病院へ行く前にクリニックへ寄った。物療が済んで「治療表」を会計へ持って行くと、「病院の方へ寄ってください」と事務員が言った。病院でして貰った点滴代は払わなければ…と行った。受付で名前を告げると、若い男性事務員が診療明細書と請求書を持って出て来た。11,070円。 「入院しなかったんですよ」 「お互いの思い違いがあったとは聞いてますけど、個室をゲットされてましたから」 「えー!? 入院してないのに、部屋代トル? 点滴だけしかしなかったのに、この治療費は高すぎますわ」 「いいえ。血液検査とか、いろいろしてますよ」 車椅子に座ったまま点滴して貰っていたのは見ていたけど、そんなにいろいろしていたとは思えない。 「土曜日に、やっぱり具合が悪いので『入院させてほしい』と電話したら、『ほか当たってください』と剣もほろろでしたでしょ。別の病院へ救急車で行きました。危険なほどの貧血と知ってはったのに締め出しといて、ここは、お医者さんいてはれへんのかと思てましたわ。3人がかりで入院薦めたあげく、こんなに請求しはるんですか?」 ハンサムだけど歯並びの悪い事務員は、請求内容をくどくどと説明した 「とにかく、本人にこの請求額を見せてからでないと、お支払できません」 「はい。では、このコピーを取ってお渡しします」 事務員は、明細書と領収書のコピーに「コピー」と書いたものをくれた。 そこからタクシーでI病院へ行った。車の中で、「入院もしてないのに、キワは13,000円も請求してますねん」と話した。 「へええ。入院もしなかったのに……!?」 ドライバーは、感心していた。タクシー ドライバーは、乗る度に違う。 ショータンは点滴中だったが、点滴と輸血とで、顔色もよくなっていた。部屋にも院長先生にも不服はないようだった。キワ病院で貰って来たコピーを手渡して、事務員の説明を伝えた。ショータンは言った。 「アホか」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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