げんが３歳半のとき自閉症と診断された。
それはむしろ遅い診断だった。

「男の子はこんなもんよ」
という友人の助言を信じて
ずっとどこにもみせにいかなかった私。

でも三歳半検診のときに
私ははっきりわかった。
「この子は普通じゃない。」
言葉の相談というのをうけて
「げんちゃんは自閉症だと思います。」
と言われた。別にショックではなかった。
すぐに松風園を紹介されて入園。
「知的障害の通園施設なんですが・・・
大丈夫ですか？」
と聞かれても、全然大丈夫だった。
松風園では最初の４ヶ月ほどは母子通園を余儀なくされる。
いっしょに入園したお母さんは
「え～？」
と言って戸惑っていた。

私たち親子は喜んでいた。
１０ヶ月の乳飲み子がいたけれど
毎日行くところがあるのは幸せだった。
家でも、コミニケーションがうまくいかず
げんは自傷行為ばかり。
長男のお友達の家からは閉め出され
公園に行けば
「気持ち悪い！」「こわい！」
と連発され、図書館では
「うるさいから出て行ってください」
と追い出された。

でも、松風園では誰もげんを邪魔者扱いしない。
それどころか
「とてもわかりやすい、元気な子」
と誉められた。
入園して３ヶ月くらいですぐ、カードやスケジュールをやった。
その時に、先生はこう言った。
「常に園と家の中を同じ状態にしてください。」
自閉症というのは汎化が難しい。
だから、まず統一した対応をどこでもしなくてはいけない。
家では良いと言ったことが
園ではだめだとは言ってはいけない。
げんに関わる大人はみんな同じ対応をしなくては
げんが混乱するもとだというのだ。
私は母子通園で多くのことを学んだ。
でも、逆に、先生方は
「お母さんが一番のげんちゃんのスペシャリスト。
たくさん、げんちゃんのことを教えてくださいね。」
といわれ、多くのことを伝達した。

残念なことに日本の自閉症の（毎日受けられる）療育は
就学前までがほとんど。
あとは学校で先生に教育はしてもらえるが
療育は親がするものである。
だから、母子通園でたくさんのことを学び
げんの療育の先生にならなくてはいけなかった。
そのために母子通園は必要不可欠なものであった。

しかし・・・
年長さんになると、
今度は学校に行く練習をしなくてはいけない。
年中のときの先生に
「自閉症の子は自然に覚えることはないんですよ」
と言われたのを思い出した。
学校に行くために母子通園は月に１～２回となった。

私は不安だった。
松風園の先生方はとてもいい人ばかりだが
やっぱりげんが私のもとを離れて園で過ごすのは
大丈夫かな？と思った。
でも、パパはそれを
「おまえのおごりだ！」
と批判した。
「げんはお前が死んだあとも生きていかなくてはならないんだ！
なのに、お前がいなきゃ何もできない子にしてどうするんだ！」
と。そう、私はどこかで
「自分しかげんを見れない。」
と過信していたのだ。

それから、いろいろな人に頼ることにした。
ディサービスやショートスティ
ガイヘルさんにも頼んでいる。
ただ、急にではなく徐々にではあったが・・・

療育の先生にこんなことを言われた。
「げんちゃんは自分で発信して受信してもらえる喜びをしっている。
だから、一生懸命なにかを伝えようとしている。
松風園での療育が生きていますよね。」
そうだと思った。
ほんの２～３年だったけど
いっしょにげんと松風園に通えて良かったと思う。
たくさん、怒ったり、笑ったり、泣いたりした。
その中でげんも私もたくさん成長した。
だから、今のげんと私がいるのだ。

今日は、週１回の電車下校の日。
私は間違えて急行電車に乗り
バスの時間に間に合わず、げんは再び学校へ。
パニックになるかと思いきや
柔軟に対応してそのあと合計１時間歩きましたが
全然大丈夫でした。

げん、すごいね～
立派だね～
びっくりしたよ。
いつもと違う道を通ってしまい
松風園の駐車場で大の字に泣いていたげんは
どこにいっちゃったんだろうね？
ほんと不思議だね～