ソロ・クライマー
多少ではあるが、かつて「山」をやっていたことがあるので、ソロクライマー・山野井泰史のことは知っている。前人未踏のビックウォールを単独アルパイン・スタイル(無酸素、無支援等)で攀じるテクニック。そして、なによりも、それを単独で為し遂げる強靭な精神力に脱帽する。ヒマラヤのギャチュンカン(7,985m)北壁を単独登攀後、同行者の妻・妙子とともに雪崩に巻き込まれ、手足の指を十本失い生還。あの状況下で生還することこそが奇跡といっていいだろう。山野井でなければ生還は期しがたい。山野井泰史。世界最強のソロクライマー。俺が見ることができない世界を知る男。日本には、今、単独登攀者・山野井泰史という天才が存在することを知っておくべきだ。 大学時代の旧友と丹沢の沢を攀る。日帰りでこなす、お気軽な沢登だが、ハーネスやザイルを使うのは十年ぶりかもしれない。このストイックな世界に身を晒すのは久しぶりだ。