「愛は勝つ」 ~KAN
実は例の新しい携帯「Music PORTER」(過去の日記参照)に、私が最初に入れたのがこの曲なのです。この歌が流行ったころ、私はちょうど社会人になったばかりでした。駆け出しの仕事で失敗ばかり。上司には連日のように「お前は最低の1年生だっ!」と怒鳴られ、休日には近くの海に行っては、寄せては返す波を見ながら肩を落としていた頃……。 どんなに困難でくじけそうでも 信じることさ 必ず最後に愛は勝つ (作詞・作曲 KAN)明るく元気の良いこのフレーズに、どんなに励まされてきたか。私だけでなく、当時の新人の仲間たちも多かれ少なかれ同じ思いだったようで、当時まだ出盛りだったカラオケに連れ立って出かけた時は、たいていこの歌をみんなで合唱してしまったものです。それから約10年が過ぎたころ、この歌は私にとって別の意味を持つようになります。何とかつらい新人時代を乗り切った私は仕事で「恩師」とも呼べる大切な人と出逢いました。周辺には毀誉褒貶の多い人でしたが、その人の「夢見るちから」の強さに心を打たれました。彼は絶頂期と絶望の時を激しく繰り返しながら少しずつ夢に近づいていきました。そしてその夢に、私の夢はごく自然に重なっていきました。音楽への夢をあきらめ「会社員」になってしまった私が、ようやく得ることのできた 新たな夢でした。数年前、「恩師」はついにその夢に挑戦します。私は彼に、夢の成就を願ってこの歌が入ったCDを贈りましたが、音楽にはあまり興味のない彼が、それを聴いたかどうかは定かではありません。あと一息のところで、「恩師」は自分の夢に届くことができませんでした。しかし、常識ではかなうはずもない、果てしない夢に挑み、あと一歩のところまで迫った彼を私は素直にたたえることができました。「恩師」は今も夢を見ていると思います。そのために動いているとも感じます。自分よりはるかに年上の彼が今もなお真っ直ぐに前を向いて夢に向かっている姿は少なくとも私に「自分もまだまだ夢を見ることができるはず」と思わせてくれます。がむしゃらに動いては失敗だらけだった駆け出し社会人の私と、大きな夢に真っ直ぐに進んだ「恩師」を並べてしまうのもどうかとは思うのですが、私にとってこの歌は、そんな二つの人生が重なりながら今の自分を励ましてくれる大切な 大切な応援歌になっています。この歌が入っているアルバムのタイトルは「野球選手が夢だった。」叶わなかった幼い頃の夢を抱えて生きる、みたいなタイトルも、妙に自分と重なってしまいます。KANはピアノ弾きでもあるけど、このアルバムの収録曲は全体的に、曲調やアレンジがビリー・ジョエルの影響をかなり強く受けていると思います。考えてみたら「愛は勝つ」だって、何となく「アップタウン・ガール」に似ている気がする(笑)でも、そういうことはこのさい良いのだ。「愛は勝つ」。たった一言のシンプルな言葉の強さが、この歌のオリジナリティーを十分保っていると思います。