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少し前から、アドラー心理学などが流行っています。私は以前フロイトはよく読みましたがアドラーのことはろくに知らず、それでも何冊か解説書をななめ読みして、この人は精神分析というより自己啓発の人だ、という印象をもちました。
アドラーはフロイトとともに仕事をしていた時期もありますが、結局はまるで異なる心理学に到達したといえそうです。フロイトが人間の過去に注目することで病の治癒をめざす因果論的方法をとったとすれば、アドラーは人間の未来に注目することで人格の改造をめざす目的論的方法をとったといえそうです。これはどちらが正しいということでもなく、フロイトが富裕層の大人を診察し、アドラーが貧しい青少年の教育にあたっていた、というちがいからもくるものでしょう。
そこでやや皮肉めいたいい方をすれば、日本でアドラーが流行るのは、現在、アドラーが対象にしたような、貧しい青少年のような心理の人が多いせいだ、ということがいえるかもしれません。グローバリズムや過剰な自己責任論で人が孤立しがちな社会の中、自分を変えたいがどうしたらいいのか分からない、しちめんどうくさいことは抜きにてっとりばやい方法を教えてほしい、という人にとって、アドラー心理学はわりあい単純で前向きな勇気を与えてくれるので受容しやすい、ということがあるのではないでしょうか。
悩みというのは解決すれば何でも構わないわけで、フロイトだろうがユングだろうがアドラーだろうが、好きなものに縋ればいいわけです。私個人はアドラー心理学よりもフロイト心理学の方に共感していますが、俗流精神分析の影響で「自分が不幸なのは毒親のせいだ」と考えていたいわゆるアダルトチルドレンたちが、アドラー心理学に触発されてひょっとして前向きな人生にのり出してくれるなら、その方がよいと考えています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.08.20 11:45:09
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