サルと人と森
歌集「一握の砂」や「悲しき玩具」などで知られる石川啄木。その啄木が明治40年に「盛岡中学校校友会雑誌」に発表した、「林中の譚」という短いエッセイを、現代語に訳し、絵本に仕立て直したのが、「サルと人と森」(石川啄木/山本玲子/鷲見春佳:森びとプロジェクト委員会)である。 内容は、林の中に入り込んだ人間が、サルと議論をするというもの。人間の自慢を、サルがことごとくは言い負かしている。この童話と原文の「林中の譚」を併せて読むと色々な驚きがある。 まず、原文の発表されたのは今から約100年前のことであるが、もう現代語訳でないと読みにくくなっているということ。原文は、確かに格調高い文体で書いてあり、読もうとして読めないこともないのだが、余り昔の文体に慣れてない人には、読むのはなかなか大変だろうと思う。 この短い話の中には、自然を破壊してきた文明への過信、人間の奢りといったものに対する鋭い批判がある。これも原文が発表されたのが、まだ文明開化の熱もさめやらぬ明治40年であることを考えてみると、その先進性に驚く。 「人間はすでに祖先を忘れ、自然にそむいている。ああ、人間ほど、この世にのろわれるものはないだろう。」 サルの嘆きは、そのまま啄木の嘆きでもあったのだろう。 ○石川啄木関係の書籍(「サルと人と森」とは直接の関係はありません) ○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・文理両道・本の宇宙(そら)