後鳥羽伝説殺人事件 ―浅見光彦シリーズ第33弾―
悲劇は、恐るべき偶然から始まった。12年前、後鳥羽伝説を求めて親友と旅をしていた正法寺美也子は、宿泊していた民宿が台風のため土砂崩れに巻き込まれ、親友を亡くし、自らも記憶を失くしていた。その美也子が、自らの記憶を求めて旅をしている時、たまたま立ち寄った尾道の古書店で、「吉備地方風土記の研究」という本を見つけた。その本の裏表紙にはなぜか正法寺家の蔵書印があった。そして、美也子は、三次駅構内の跨線橋の上で絞殺体で見つかった。 そんな出だしで始まる、フジテレビ系列で10日に放映された「後鳥羽伝説殺人事件 ―浅見光彦シリーズ第33弾―」は、ドラマの方では33作目だが、実は原作では、浅見光彦が登場する内田作品の第1作目である。 12年前に災害に巻き込まれて死んだのは、光彦の妹の祐子であった。亡き妹の親友を襲った悲劇に光彦は急きょ三次へ向かう。しかし、事件のカギを握るとみられる人物が次々に殺されていく。 原作の方のレビューは、以前に書いているので、そちらの方も参考にして欲しい。ほぼ原作に忠実だったと思うが、いくつかの相違点にも気付いた。気がついた相違点は次のようなところか。・ドラマは正法寺美也子が美人になっている。 原作では美人ではない(内田センセはもっと直接的な表現を用いていたが)という設定だったが、やはりテレビドラマではヒロインは美人でなくっちゃということだろう。その関係か、光彦の妹の祐子が亡くなった時にあったもう一つの悲劇の犠牲者が祐子から美也子に変更されている。・祐子が災害で亡くなったのは、原作では8年前だったと思うが、ドラマでは12年前になっている。・原作では、野上刑事は、県警のキャリア警部からうとまれているが、ドラマではそのようなシーンはない。・原作にはない祐子の回想シーンが結構入っている。 ここで言う後鳥羽伝説とは、承久の乱に破れ隠岐に流された後鳥羽上皇の、京から隠岐に向かうルートが、歴史書に書かれているものとは違うというのものである。伝説のルートである尾道、三次、奥出雲の美しい風景が旅情を誘う。暇と金があれば、カメラとバッグを抱えて同じルートを歩いてみたくなる。そんな作品だ。 最後に光彦と野上刑事が互いに「あなたに会えてよかった」と男の友情を通わせるシーンにはジーンとくる。(原作)・内田康夫:後鳥羽伝説殺人事件(出演)・中村俊介 (浅見光彦)・野際陽子 (浅見雪江)・榎木孝明 (浅見陽一郎)・火野正平 (野上刑事)・梅宮万紗子(正法寺美也子) ・山口あゆみ (浅見祐子) ほか○原作「後鳥羽伝説殺人事件」のレビュー記事はこちら○面白かったらポチっと1票! 風と雲の郷 別館「文理両道」はこちら風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」はこちら