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カテゴリ:F1・モータースポーツ
ほぼあらゆる部分が調整変更可能なF1カーというシステムは、言うなれば方程式のすべての要素が変数であることに等しく、その組み合わせのアナログ的膨大さから最適なセッティングを見つけることさえ恐ろしく困難な代物です。
それをさらに困難にしていることに環境変数があり、路面温度変化による影響を敏感に反映するタイヤの摩擦係数と発熱粘着力による物理的性質があり、それがデグラデーションを起こすことでさらに難しいものになります。 ボディー形状や前後のウイング、フロア、ボディー後端のカウルなどの空力的デザインは現在でもCFDだけでは不十分であり、CFDのみで風洞を使わずに設計されたかつてのヴァージンVR-01(約8年ほど前)等は全く競争力がなかったという事もあって、殆どすべてのF1チームは風洞による評価を現在も重要視しているのだが、自車が走ることで発生する空力的性能だけでなく、風や自分以外のマシンの起こす気流が及ぼす空力的影響も大きく、ライドハイトのわずかな変化でもダウンフォースは大きく変化するため、搭載燃料の消費に伴う荷重変化も見過ごすことが出来ないはずです。 レース中の燃料消費がもたらす重量バランスの変化とブレーキ素材の物理的経時変化とバランスの変化も操縦性に影響し、ドライバーはそうした変化をバランスバーの操作により常に対応しているはずだが、路面に散らばるタイヤマーブル(タイヤのちぎれたカス)は時間とともに増えて行き、そのような外乱もラップタイムに少なからず影響を与えているはずです。 そういう複雑な要素を考慮した車両システムを上手く設計することの困難さは途方もないものであり、しかも極めて迅速さを要求される世界ですから、それらの最適化設計という事を充分にこなせる人材は限られているのです。 ただでさえ難しい作業であるにもかかわらず、毎年のようにタイヤは進化し、レギュレーションも変更されますから、F1カーを設計してそれらしい形にすることは、費用を考えないという前提なら、車両の設計が出来る者であれば誰でも可能であると思えるのだが、出来上がったF1カーをその能力で競えば雲泥の差が付くことになるのです。 そんなことから、多分この世界は早晩AIによる統合的な最適化設計の実現と、あらゆるセッティング変数に対応する正確なシミュレーションソフトウエアの開発に成功したチームが強くなるはずである。と私は考えています。 従って、レッドブルのマシンが何故強いかを考えると、エイドリアン・ニューエイの存在だけではなく、彼らが最もCFDやセッティングシミュレーションを上手く利用出来ているチームなのではないかと想像しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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